第一四話 斡旋所

「さて次よ」


母上に連れられ建物の中に入る。

次の建物は何だろうか?


「いらっしゃいませ」


「失礼するわね」


建物に入ると一人の女性が座っていた。


「あら奥様、どうなされたのですか?」

「息子にここを見せたくてね」

「あらそれは、そちらにいらっしゃるの?」


母上に突然背中を押され

その女性の前に立たされる。


「失礼いたします」

「なっ!?」


突然、目の前の女性が手を伸ばし

自分の顔をペタペタと触ってくる。


突然の事に身動き取れなかった良だったが

近くに寄ったからか

目の前の女性が目が見えてない事に気づく。


「ふふ、どう?うちの息子」


「ありがとうございます。

 流石奥様の息子様

 形が整って美男子ですね」


「そうでしょうとも!!」

母上が嬉しそうに頷き俺に良かったわねと言ってくる。


何が良かったのだろう自分は、

顔を触られただけなのだが…


「あっそれで良の為に、

 この中を見て回りたいのだけど」

「なるほどわかりました。

 それでは奥様、案内人を呼びますね」 

「よろしく」


女性が木の板を手に取り

カッカッと机を叩くとスッと人が出てくる。


「その木は、何なの?」

どうやら母上も知らないようだ。


「ふふふ、最近導入したんです

 木によって音が違うんですよ?」

「普通に声かければいいじゃない」

「様々な客がきますからね

 結構便利なんですよ」


…なるほど、音によって客に知られずに

情報を送るのか。


「それじゃ案内をしてあげて」


「あっ私は、ちょっと仕事があるから

 離れるわ春蘭、良についてあげて」

「はいわかりました」

「…では、若様こちらに」


と言う事で母上と別れ良達は、

施設内の回る事になったが…

案内人の眼帯が目につく。


「気になりますか?」


案内人が自分の眼帯を指差す。

「えっ…すいません

 そんなジロジロ見るつもりわなくて」

「はは、大丈夫ですよ

 …戦争で失った物です

 ありがたい事ですここでは、

 私みたいなのも雇っていただけて」


そう言って、案内人の男は、

劉良に頭を下げる。


母上が管理しているのだが

ここは、黙って感謝を受け入れよう。


「さてまずここは、

 斡旋屋と呼ばれています」

「斡旋所?」


「はい、人々に様々な仕事を

 斡旋しております」


「人がいないようだが?」

「皆様が入ってきたのは、

 依頼者が来る扉でして

 こちらが仕事を斡旋する場所です」

 

そう言って案内人が扉を開けると

大きな部屋に繋がっており

様々な人がいて賑わっていた。


「あちらに依頼内容が書かれた

 木簡がかけられており

 それを手に取って受付に持っていくと

 その仕事が受けられるようになります」


「なるほどそれにしても人が多いな」

「このご時世本職だけでは、食べれませんから」


「なるほど…ん?」

「若様どうしました?」


…人違いか

「…いや、なんでもない続けてくれ」


劉良は、そう言って意識を案内人に戻す。




「……どうしました?」

男が隣に立っている黒い髭を生やした男に話しかける。

「…いや裕福そうな小僧が

 一人こちらを見ていた」

そう言って見られていた方向を睨む。

「…バレましたか?」

男が鞘を握る。

「いやそれはなさそうだが

 嫌な感じだな…引くぞ」

「はい」

そう言って二人の男は、人混みの中に消えていった。

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