第七話 麒麟児 【賈詡視点】

「チッ…それで賈詡

 お前何であんな事を言ったんだ?」


先程の事を思い出していると突然華雄が質問してきた。


「あんな事って、特質した才はなく凡才であると言ったことか?」


「あぁその通りだ、あれが凡才?

 お前目が腐ってるのか?」


華雄がこちらを睨みつけてくる。

ああ息苦しいまったく武人の圧というのは、


「本気で言ってる訳ないでしょ

 ああでも言わないと家庭教師を外されるかもしれなかったかも…」


「そりゃそっか…そうだよな」

その答えを聞いて華雄は、圧を消し少し機嫌が良くなる。


「…だってありゃ化け物だぜ」


その言葉に賈詡は、驚く

確かに華雄が劉良をかっていることは、

知っているがここまでとは…


「華雄、貴方がそこまで言うとは驚きだ

 そこまで凄いのか?」


華雄は、酒を一杯飲み干した後

フッと笑って、


「確かにまだまだ子供だからか

 力は弱いし速さも足りない

 だがな…凄いぞ、

 鍛錬の途中…ふとした瞬間、

 熟練の兵士と戦っている感覚に陥った。」


「何?…そんな事ありえない」


「そうだありえないんだ、

 戦場も知らない子供が…

 だが持っていた!!

 技術を…そして何より戦いでしか

 身につかないあの嗅覚を!!」


華雄の態度を見て冗談を言っているとは思えないだがそうなると…


「お前は、どうだ?」

華雄が問いかけてくる。

…ここで誤魔化す事はできないな。


「…同じだ」

「あ?」

「私も感じていたのだ…

 まるで優秀な文官と話してる様だと」


そうなのだ、確かに子供らしい所や

知識不足な所もあるが

授業を進めて会話をしていくと

劉良の内政知識の高さに驚いた。


それは、決して机上の空論ではなく

実際に経験した事がある様な

裏付けのある知識に思え

まるで優秀な文官と話している様な感覚に

陥る事が何回もあった。


「それじゃつまり、熟練の兵士の様な才能と

 優秀な文官様な能力があると?」


「あぁそう言う事になる…な」


「見た目は子供、中身は大人ってか?」


「言い得て妙だな」


華雄の冗談にふっと笑う。


「そうか………欲しいな」


その華雄の言葉に同意する。

まだ十歳でそこまでの能力を示したのだ

涼州に必ず欲しい人材である。


「なぁ…賈詡」

「何だ?」

「………攫っちまうか?」


華雄は、本気で言ってる様だ。


「…ダメに決まってるだろ」

「だがよ、このままあの親の側にいたら

 才能潰されてしまうぞ

 それに…な?」


確かにそれは、一理ある

劉備と言う人間がどれほどのものか知らないがあそこまで心酔し息子を見ていない

あの男の側にいては、

劉良にとって百害あって一利なしだと感じる。


「だがダメだ…今はまだ…」

「今は…ね?…なら軍師殿どうする」


華雄が姿勢を正しこちらを見る。

正直親から引き離し涼州に連れて行く

策ならいくらでも湧き出してくる。

だが劉良の事を考えると…


「今は、…徹底的に鍛えましょう」

「了解した」


二人は、劉良を持てる全てを持って鍛え上げる事を決意した。


「劉良は、どんな男に成長するのだろうか」

「そうさな〜劉良は、まだ子供で

 今から背が伸び筋肉がつくから

 まだわからないが最低でも本気の俺と

 打ち合えるぐらいには育てたいな」


「それは、手厳しい」

そんな武人、涼州でも数えられるほどしかいない。


「それならお前は、どうなんだよ」


「私ですか?…そうですね。

 今の劉良は、菅仲を目指しているだけ

 あって内政官向きですが

 せっかく教えるのです。

 謀略も范増並みにしたいですね〜」

 

その言葉に華雄は、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「古の英雄並みって

 …お前の方が厳しすぎるぞ…」


「フッ…それぐらい志高くてもいいでしょ、

 …そして、時が来たら」


「時が来たら……な、

 わかった、それで…報告するわ」


そう言って華雄は、置いてあった

酒を飲み干し机に向かう。

これで飲み会は、終わりの様だ。


賈詡は、その背中に挨拶をして

部屋から出る。


「……いい月だ」


夜空には、月が綺麗に浮かんでいた。

賈詡は、その月明かりが当たる廊下を歩きながら自室に戻る…満面の笑顔で…

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