異世界王アルテルアと最強血統者の学園宮廷魔道士

倉村 観

プロローグ

第1話 俄然架設

         





        ✛ 


オレは下校途中うつむきながら速歩き気味出歩いていたが、ある書店でその足を止めた。


西暦2027年 12月15日 市世間はクリスマスのシーズンで、ここ、菜御矢ナゴヤの街中には、ドコモかしこもネオンの彩りと、めまいがするほどの赤いリボンをあしらったフェイクグリーンで溢れかえっていた。


この日は平日で唯一習い事のない水曜日だったので、早く帰って部活で疲れた身体を休めようと帰宅を急いでいたが、なぜか、妙にその書店のことがどうにも気になって仕方がなかった。

 

竹中書店 


その建物の上側には記された立派な看板が備え付けられていた。


その外見はまさしく小洒落た古本屋と言ったところだった。


その書店は面積こそ、両隣の建造物に比べれば、狭かったが、外壁や設備、また件の立派な看板も新品同然のようにキレイで、近頃改装工事が行われたことは、誰の目から見ても一目瞭然といったところだった。


扉に入ると、客の入店を知らせる甲高いベルが鳴り響いていた。 それと同時に、店の奥でレジに座り新聞を眺めていたおっさんが目を見開いてこちらを見てきて、店内に響き渡る陽気な声を上げた。


「いらっしゃい! なんかほしいモンでもあるのか? てか、珍しいな、中学生くらいか? 坊主?」


「うす。中学生2年生です。 いや…欲しい本とかはないんだけど、なんか気になっちゃって。」




「ほら…ここだけこの季節なのにバカでかいだけのツリーとか飾ってないでしょう。 かえって目に入ったんすよ。」


オレの言葉を聞いた。 おっさんは唐突に嬉しそうな顔を浮かべ、レジの台から身を乗り出してきた。


「わかってるな〜! 坊主! そうなんだよ、最近の有象ども、どいつもこいつも、た〜けとる。 シーズンだの何だのって商業戦略丸出しにしやがって! そのくだらんしきたり流される、ガキどももガキどもだ!!」


「…ははは そうっすねー」


オレは適当におっさんの話を聞き流しながら目的もないのに、何かしらのを求めるように店内を探索した。


 店内には、もちろん、壁一面が本棚とそこに収納された売り物で覆い尽くされており、それを天井の照明が温白色に照らしていた。


 普通の店には有るはずの店内用のbgmはなかったが、店長のいる会計レジの直ぐ側の壁に埋め込まれたテレビからは、常に大音量でニュース番組が垂れ流しになっていたため、かなり賑やかだった。


本棚にはいろいろなものが並んでいたが、何よりも気になったのは本棚の一番下それも角に隠すように、そした追いやられたかのように収納されていた。 異様に大きく、1000ページをも超えるくらいの分厚さの、古びた本だった。


 その本の見た目は異様で、他の、どの本とも似ても似つかなかった。


 その本の表紙はある生物の銀のヒゲを編み込まれて作られており、飾りとして、内側から光を放つ鉱石が上下で2つ、それぞれ上が十字の形、下が大きな丸形の紋章としてあしらわれていた。


 


「ヘッヘッヘ、そんな本に興味を示すのは、お前さんくらいだぞ! あんた、名前は?」


本屋のおっさんはどうもなにか有りげに不気味な笑い声を上げて、名前を訪ねてきたので少し戸惑ったが、まぁ別に知られて困ることもないので答えることにした


「……神崎苦来だけど。おっさんは?」




「あぁ? オレは飯田幸三郎だ! クラク? 珍しいな名前だな。 お前の本選びのセンスと一緒で。」


「どういう意味ですか? それ…。」


オレが、本を手に取ったまま怪訝な表情をしていると幸三郎のおっさんは、何かを決心したかのように、大げさに口を開いて、こういった。


「クラク!その本はやめときな!! なんてったってそれは『開けない本』だからな!!」


「なんだって?」


「だから、そのまんまの意味さ!! 開けないんだよその本は、どれだけ強い力で引っ張ってもな!! そのお陰で売り物にしてるにも関わらず、客にどんなジャンルの本かどころか、タイトルすら説明できねぇ!!」


幸三郎のおっさんの言葉を聞き、オレは本を見つめた。 確かにその本を握ると冷や汗が頬を伝う感触を感じるほどに嫌な予感がする


しかしいざ意を決して、試しにその本を開こうとしたところ、聞いてた話と反して、何とその本は簡単に開けた。 オレはおっさんのからかいに腹を立て、睨みつけるようにおっさんの顔を除いてみせたが、心底、驚愕したおっさんの表情を見て、からかいでもフカシでもないことを理解した。


 オレは再び冷や汗が頬を伝うのを感じ固唾を飲むと、開いた本の1ページ目に目を落とした。


『異世界殺し転生者のアルテリア』


そのページの内容は表紙になかったタイトルの代わりにそう大きくタイトル記されているだけのページだった。 おっさんは、しばらく沈黙していたが、次第に震えた声で語りだした。


 




「OK その本について、色々教えてやろう。」


「色々?」


オレが、困惑の声を上げると、幸三郎のおっさんは、この本との出会いから事細かに説明し始めた。


「色々…。方にも触れることがあるから内密にな。」


「所謂曰く付きでな、その本はちょうど半年前にある少年が持ってきたものでな。何でも『他の新品同然の本もタダで売るから、これも買い取ってくれ』って言われたんだ。 当然、未成年から、買い取りをする気はなかったんだがな…どうしてもとせがまれて……。」


「それで、その本の事を少しだけ教えてもらった。」


「ちょうどおみゃーさんと同じくらいの年の少年でな。美少年だった。 お前も相当だが…それよりも、知的で…まぁハンサムだった。 」


オレはその男の特徴に覚えがあった。


「その男は黒髪で碧眼だった?」


「あぁ、なんでわかったんだ?」


「知り合いに、似てるやつがいて…まさかと思ってな。」


オレは幸三郎さんとの会話を適当に楽しみながらその手に気付けば、握られていた例の本を持って、また、気付けばその本をレジにおいていた。


「買うのかい?」


「あぁ 頼むよおっさん。 値札が着いてなかったけど幾らだ?」


「あぁ…無料でいいよ。 正直、オレもな、その本は気味が悪くてな。 厄介なものを押し付けられたと後悔してたところだった。」


 幸三郎のおっさんは、そう言って引きつった笑顔をこちらに向けてきた。


「そういうわけにもいかないね。 冷やかしにきたわけじゃない、ワンコインでいい?」


「じゃあ500円で ちょっとまって包み紙持ってくるよ。」


そう言って、幸三郎のおっさんはレジの奥に続いてる部屋に消えていった。 

 待っている間、オレは壁に備え付けられていたテレビのニュース番組を見ていた。


 ニュース番組は、さっきからずっと、凄まじい炎に包まれた巨大な建造物を何十台の消防車、なんば百人の消防隊員が取り囲み必死に消火活動に励む姿が、ヘリから撮影され、映像が映し出されていた。


「酷いもんだろ? ソレ どうやらテロリストがフロリダの大学に放火したらしい。」


 オレがニュース番組に釘付けになっていたのがわかったのか、奥の部屋から帰ってきた、おっさんが概要を語りだした。


「何でもオーランドって場所で3日前に起こったことらしい。」


「3日? 冗談だろ?オッサン オレは毎日ニュースはチェックしているが…こんなの今知ったぜ?」


「何でも、同時に大規模な通信トラブルが起こったらしくてな…一人は行方不明……それ以外はお陀仏らしい」



「なら…そいつが犯人かもな…」



「…推理小説も買ってくかい?」



「いや…またくるよ…おっさん」


俺の発言をからかったおっさんを尻目に、オレはその店を後にした、思えばこのときの出来事を時々、オレは後悔するときがある。 だがまぁ、今更なのだろう。




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  全ての時代の魔導書 モナリザ  


          タイプ 先導魔能→自立精霊媒塊


 モノリスランク S


精霊繁殖力     ☆☆☆☆☆

魔能発動精霊消費    ∞(常時発動可能なため)

クールダウン    ☆(真の魔能は30時間)

損壊力/死誘力    ☆/☆☆☆☆

能力発動スピード    MAX

耐久性/タフネス    MAX

発展性/進化余地    0/0 (ただし変化自体はある)


内容は不明だが、その本はいついかなる時代でも目撃されている。


いかなる魔能、魔法を含めてたあらゆる手段を用いても傷一つつけられない耐久性を誇る。


それはかつて歴代魔王全てが使えていたスキルだった。


そしてこの発導魔能は発導者が死亡してから1000年以上は立っているのにもかかわらず魔法としてのデッドコピー復唱者は、すべての世界で存在しておらず。それどころか能力は永遠と持続し続けている。


故に遂には、それ自体が魔能であったにも関わらず、魔能、魔法を発動に必要な、媒介にまでに、変貌した。 今や使い手を自らで選出するそれは、イデア界の境界を捨て、現実に完全権限した、自立意思をもつ『魔道具』である。


しかし、魔能としての真価は別にあり、その本の最終ページには、それを発動させるための『詠唱』が記されている。


選ばれし者にしか開けない本、だがその基準は不明である。


     

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