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昼過ぎくらいに姉貴とわかばちゃんは帰っていった。光の監督をあかりと交代して、俺はとりあえず睡眠を取ることにした。
なんだか懐かしい夢を見た。俺は高校生で、大館駅から奥羽本線で弘前に向かっていた。さすが赤字路線、車内はガラガラである。田んぼばかりの風景がリンゴ畑ばかりになるのを見て、ああ青森県サ入ったんだな……と考えている。
列車が弘前に停まったところで目が覚めた。すっかり夕方になっていた。
光は昼寝をしていた。あかりもその横で寝ている。
もし秋田県が異世界サ飛ばなかったら、あかりと結婚したこの人生はなかったわけで。
いろいろ不便な異世界ではあるものの、こういうふうに家族で暮らせるのはいいことなのではねえべか、と思う。あかり本人もこの人生でよかった、と言っているのだし。
まあいろいろ不便なのは秋田県が日本にあったころからなんも変わらない。新作映画を観るには一時間半かけて弘前サ行かねもねかったし、若者が楽しいと思う場所はなんもなかったわけで。冬になれば灯油代がどんどん飛んで大雪がどしどし降ってたわけで。
あかりが寝言で「菅原くん……」と、そう呟くのを聞いて、ぼっと赤面してしまった。
しかし続きで「なして制服血まみれなのや……」と、懐かしい事件の話だったのに気づいて、俺はまた赤面した。恥ずかしい顔をしていたら、翔平がぴょんぴょんとやってきて俺の膝に座り、なにやら猫のようなため息をついた。
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