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 こちらの世界に知育玩具というものはないのか。ロイは生活水準の低い異世界一般市民ゆえアテにならないので、イルミィに相談してみることにした。


 イルミィはいまあかりの母さんの実家で暮らしている。インスタの最新バージョンが手持ちのスマホで使えないのでもうインスタはやっていないのだが、テレビの取材が来たりしてすっかり有名人だ。ご当地番組にしょっちゅう出ているのでだいたいの秋田県民が知っている。


「知育玩具? ああ……子供のころ知恵を鍛えるからとパズルをよくやらされましたわね。木製のブロックを組み合わせて、中に彫ってある穴や溝にボールを通して遊ぶピタゴラ装置的なやつ」

 まさにそれ、現実世界の将棋の藤井なにがしが子供時代に遊んだやつではないか。それはいくらで、どこで買えるのだ、と聞いてみる。


「王都で買ってきた、と乳母は言っていたけれど、いまも作っているのかしら。木工ギルドの最高峰の職人が作ったものだそうだから泣けるほど高くてよ」

 泣けるほど高いのか。幸い攻略本で作った元手がある。値段を聞いてみる。


 ……バカこくでねぇとおもわず泣き出す値段であった。その上王都に行かねば買えないのだという。まさに王侯貴族のおもちゃなのであった。

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