千早君の愛が重い

蒼生光希

第1話 優しい物音

 私はベッドの中にいる。

 頭が痛い。

 起き上がりたくない。


 キッチンで千早ちはや君が朝食を作ってる。


 たぶん、トーストと目玉焼きとサラダ、コーンスープ、カフェオレにヨーグルト。


 はたから見たら絵に描いたような恋人達の幸せな時間。だけど。


 寝返りを打って、私は考える。

 どうしたらいいんだろ。


 ああ、もう。

 自分の心がわからない。


 外はいい天気で、カーテンがそよそよと揺れて、彼の鼻歌が聞こえる。食器を運ぶ音。ふわりと漂う、美味しそうなにおい。


「せんせ……じゃなかった、奈津さん。

 朝ごはんできたよ」



 教え子だった彼が、数年後こうして私の部屋にいるなんて、思ってもみなかった。

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