第39話

摩訶不思議 三十九章

一二三 一



三十八章から引き続きKT君

との体験について



(一)

「その話やったらよう分かる。姉に聞いた事が有るわ。」とKT君。さらに続けて

「信じるかどうかは分からんけど、姉は世間で言う霊媒師、霊能者やねん。」

「エッ?」隆ともう一人が同時に発した。

KT君はさらに言葉を続ける。

「姉は霊媒体質で、身体に霊を降ろして言葉を伝える事をしてる。毎日、毎日色んな人が相談に来てるわ。宗教では無いけどある意味宗教的なところはあるな。決してインチキな事や法外な金銭を要求したりはしてないよ。俺からしたら人助けのボランティアみたいねもんやと思ってる。」

隆のそれまでの人生で初めて「霊媒師」という言葉を実感する事となった。

 「へ~。そうなんや・・・」と隆。

KT君が隆の反応を受けて再度話す。

「まあ、信じてくれとは言わへんから。

今の隆のそうなんやくらいの反応で、丁度良い感じやな。」

「KT君、それは違うで。俺は感心してあんな言い方しかできなかってん。

実は俺もKT君のお姉さん程では無いけど、霊媒体質なんよ。だからよく分かる。」

「へ~、お前もそうなんか。」

「見えたり、聞こえたりするのんか?」

「うちの姉は自分でコントロールできるって言ってるけど、隆もそうなんか?」

「いや、俺はそんな事ようせんわ。」

その後隆はKT君にこれまで経験してきたことをかいつまんで話した。

「お前もしんどい思いしてるなあ。姉を見てたら大変やろなあっていつも思う。」

「まあ、俺は人助けなんてしてないからKT君のお姉さんみたいにしんどくはないねんけど、怖い思いはいっぱいしてるわ。」

「そうやろなぁ。見えたり聞こえたりしたら怖い思いはいっぱいあるやろな。」

それぞれに恐怖体験をした三人は帰路につく

のだが、まずN県にあるKT君の家によることになる。

隆はKT君のお姉さんに興味がわいていて、是非とも話を聞きたいと思った。


(二)

 三人を乗せた車は一路N県へと向かっている。車中でもKT君がお姉さんのこれまでの話をして、隆は聞き役に回っていた。

車はN県の郊外にあるKT君の自宅へと到着した。郊外ということもあって敷地も広く、立派な構えの家であった。

広い座敷に通されてお姉さんが来られるという事で待っている時KT君からご先祖の話を聞かされた。

KT君のご先祖はYK城の家老職をしていたとのことで、先祖からの土地だそうだ。

夏の風物詩のスイカが目の前に置かれた。

同時にお姉さんが来られて

「いらっしゃいませ。何にも有りませんけどゆっくりして下さいね。」と挨拶された。その後このお姉さまの口から、アッと驚く内容の話が語られる。

「M、この人たちはあんたの一生の友達になる人達やから、大切にしないとあかんよ。」

KT君、家では名前のMと呼ばれている。

KT君は家に着いてから隆達とずっと一緒に居てお姉さんとは会っていなかったし、勿論話もしていなかった。

「M、今日何か有ったやろ?黙ってても分かってるよ。こちらのお二人はあんたの命の恩人やね。」さらに言葉は続く。

「今日、海で溺れかけたやろ。

ご先祖に水難事故で亡くなった方がいらっしゃって、その方があんたを抱きかかえて船を呼び寄せたって言うてはる。」

「M、あんた隆君が止めてるのに高波の海に入ったんやろ。アホやなあ。今回はご先祖様に助けてもらえたけど、いつもそう上手くいくとは限らんからね。」

「人の忠告は聞かなあかんよ。」

この言葉を聞いて隆は凄いと思った。それもそのはずで、今日三人に命に係わる出来事がその場に居なかったお姉さんの口から正確に出てきたのである。

お姉さんはKT君に話し終えると隆達の方を向いて優しい笑みを浮かべながら

「わがままな子ですけど、これからもMをよろしくお願いします。仲良くしてやってくださいね。」と頭を下げられた。

「あのう・・・お姉さん、お聞きしたいことがあるんですが・・・」と隆が切り出した。するとお姉さんは隆の言葉を遮るように

「隆さん、あなたは大丈夫ですよ。私もそれなりに長年こういう事をしていますが、あなたのような人にお会いするのは初めてです。これからも色々経験されるでしょうけど、あなたなら大丈夫。とても強い方があなたを護っていらっしゃいます。」

お姉さんはニッコリと笑いながらその場を離れられた。

「とても強い方・・・護っていらっしゃる。」この言葉で隆の脳裏にはプラモデル作りの時のことが蘇っていた。

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