第27話

摩訶不思議 二十七章

一二三 一



大阪のナンバにあったプランタン

覚えていらっしゃる方はもう少なく

なっているでしょうね。

今回の話はそのプランタンに纏わる

お話しです。


(一)

時は1984年まで遡ります。

この年の一月にフランスの百貨店プランタンの日本3号店プランタンなんばとしてオープンしました。

隆もどんなところか自分の目で確かめたくてプランタンなんばに出向きます。

 当時の大阪地下鉄ナンバ駅の改札を出ると地下通路を辿ってプランタンなんばに着きます。

オープン当初は大変な人出だと思っていた隆は、オープン直後の期間を避けて少し落ち着いた二月中旬に行くことにしていて、この日を心待ちにしていた。

 ナンバの地下街を通ってプランタンなんばの地下入口。

店の中に入ろうとした隆の足が止まります。

「何やろ。この不気味で嫌なゾクっとする感じは。背筋が凍る・・・そんな感じ。」

「嫌な胸騒ぎ・・・」

「いつものザワザワ感とは感じが違う。」

少し気になってプランタンなんばの地下入口の横で立ち止まる隆です。

 しばらくして胸騒ぎも治まったので店に入ろうとしました。

するとどうでしょう。またもや不気味で嫌なゾクっとする感じがあります。

「エッ!またや。」

嫌な胸騒ぎもまた起きています。

プランタンなんばに入ろうとする度に、不気味で嫌なゾクっとする感じと嫌な胸騒ぎが起きます。

 その日何度かプランタンなんばへ入ろうと

時間を変えたり、地上入口から入ろうとしたりいろいろ試したのですが、不気味で嫌なゾクっとする感じと嫌な胸騒ぎでとうとう入ることはできませんでした。

とりあえず日を改める事にして映画を観て帰路に就いたそうです。

翌週の日曜日。午後1時に前回入る事の出来なかった、プランタンなんば店の地下入口に着いた隆。

今度こそと店に入ろうとします。

やはり前回と同じことが起こりました。

不気味で嫌なゾクっとする感じと嫌な胸騒ぎがあります。

 「そうか。これは俺にここには入るなってことなんやろな。」と隆は思ったそうです。

これを読まれている方でご年配の方がいらっしゃれば薄々お分かりかと思います。

隆もこの日も入れなかったことでそれに気づきました。

 「千日デパート・・・」

「そうか。千日デパートの跡地か・・・」


(二)

ここで「千日デパート火災」についてふれておきます。

 1972年(昭和47年)5月13日の午後10時過ぎそれは発生しました。

火元は三階ニチイ千日前店布団売り場付近。

防火設備、消火設備の整備不足、人的要因、

ビルの構造など様々な要因が重なって、2階から4階まで延8700平方メートル以上が9時間に渡って燃え、死者118人・負傷者81人にものぼる人的被害を出した戦後日本のビル火災として最大の惨事となった。

 プランタンなんばはこの火災で多数の死傷者を出した千日デパートの跡地に立ったビルであった。

 時が経ってすっかりその事を忘れていたがここには大きな因縁があった。

隆の守護霊がこの建物に入る事を良しとしていないのだろうと隆は悟った。

実のところ、隆はその後も何度か入ろうと試みている。

結果は同じ・・・入れなかったそうだ。



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