転移型トラップ

「……ここか」


 ダンジョンに着き、少し周りを見てみる。


「意外と人いないんだなぁ」


 そんなに人気の無いダンジョンなんだろうか?

 まあ、それならそれで良い。

 モンスターやアイテムの取り合いにならないし。


「取り敢えず、三層くらいまで行くかー」


 ダンジョンには層があり、深くなるにつれどんどんモンスターも強くなっていく。

 もちろん、強いモンスターを倒せば手に入る経験値が多くなるし、深ければ深いほど希少なアイテムが手に入りやすくなる。

 因みに、このダンジョンは八十五層まで確認されているそうだ。

 それ以上はモンスターが強すぎて確認出来ていないらしい。

 まあ、俺には関係ない話だ。

 何故なら……


「うわぁぁぁ!?」

『クェーッ!』


 一層目のちょい強モンスターで苦戦するからである。


「しょっ、【召喚】!」


 地面に魔法陣が描かれて、緑色の肌をしたゴブリンがボロそうな棍棒こんぼうを持って魔法陣からスゥーっと出てきた。


『ギギィッ!』

『クェーックェーッ!』


 ゴブリン君が棍棒で鳥のモンスターを倒す。

 ふぅ、危なかった……。

 側には一体のゴブリンの死体。

 そう、今召喚したゴブリン君は二体目である。

 前代ゴブリン君は、召喚してすぐにこのモンスターに頭を突かれて死んでしまった。


「一層でこれか……まあ、三層でも何とかなるだろ」


 流石さすがに先ほどのゴブリン君の様な即死はあまり無い。

 あったら俺はもっと早くパーティーを追放されている筈だ。

 因みにだが、俺はMPが最大150ある。

 そして【召喚】一回につき消費MPは10なので、あと十三体召喚する事が出来る。

 このくらいの数がいれば、三層でモンスターを討伐する事くらいは出来る。


「よし、さっさと行こう!」


 二層目は猛ダッシュで突破し、三層目に入る。


『ゲゲゲッ!』


 おっ、ここで遂にゴブリン達と遭遇か……!

 持ってる武器も鉄の剣だし、俺のゴブリン達じゃ敵わなさそうだ。


「【召喚】!」

『ギギギッ!』


 なので、俺も参戦する!

 腰の短剣を抜き、逆手に持つ。

 これが俺にとっての構えなのだ。

 そして敵ゴブリンを回り込む様にゴブリン君と共に攻める。


『ギギッ!?』


 召喚したゴブリン君には悪いが、ゴブリンは馬鹿なのでこうやって回り込むと、どっちを攻撃したら良いか一、二秒程考えるので、その隙に攻撃を行う。


『ギギェァーッ!』


 ゴブリンの首を短剣で斬り裂き、ちゃんと倒せたか肩越しに確認する。

 ドサッ、とゴブリンが地面に倒れた。


「よし、倒せた!」


 素材をポーチに入れて次へ進む。

 モンスターの素材なんかのダンジョンで取れる物は、冒険者ギルドに持って行けば換金して貰えるのだ。

 ゴブリンの耳とかは……一つ15ベジナとかで売れる。

 因みにベジナとはこの世界の通貨の事だ。


『ギギギギィー』


 おっ! 次のゴブリンが来た!

 またゴブリン君と共に回り込んで攻める。


「いやぁー、意外といけるなぁー」


 この調子ならば、案外ゴブリンを沢山召喚せずともモンスターを倒しまくれるかもしれない。


『『ギャッギャッギャッ』』


 今度は二体同時か……。

 問題ない。

 だってこいつら、二体いても先程の回り込む攻め方をするとどちらを攻撃するか迷うんだ。

 ゴブリン君には本当に悪いが、馬鹿過ぎる。


「おらっ!」


 片方ゴブリンの首を斬り裂き、もう一体の方はゴブリン君が注意を引き付けていてくれたので、背後から首を斬って仕留める。


「ありがとうゴブリン君!」 

『ギギィ!』


【召喚】で呼び出したモンスターは、普通のモンスターよりも知能が高い。

 なので、このくらいの受け答えはできるし、ゴブリン君が仮に敵二体に回り込まれる攻撃をされても、どちらを攻撃すればいいか一、二秒考えたりはしない。


『『『『ルギャギャギャギャギャ』』』』


 よ、四体!?


「逃げるぞ!」

『ギィ!』


 四体同時は流石にマズイ。

 囲まれでもしたら、一貫の終わりだ。


『『ギッギ』』

「なっ!?」


 進行方向に二体!

 くそ、戦うしかないか。


「【召か――」


【召喚】と唱えようとした途端、地面が光りだした。

 ゴブリン達が不思議そうな顔でこちらを見つめる。


「これは――ま、まさか!?」


 転移型トラップ!

 マズイマズイマズイ! 変な所に送られたら本当に洒落にならない!


「だっ、誰か助け――!」


 しかし、周りに誰もいないこの状況で、誰かが助けに来てくれるはずも無く、俺は転移させられてしまうのだった――。

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