第18話



 「グガッ……」



 イノセントが足を踏み入れたのは、かざねが展開するフィールドの中だった。


 地上のイノセントを殲滅した後、向かってくる上空からの攻撃に備えた彼女は、自らの体の外側にシールドを展開していた。


 ドーム状に広がった何重もの膜は、急速な回転を帯びる。


 “水”のイメージを具現化する彼女にとって、ある物体の形状を立体的に操作&構築するのは造作もないことだった。


 シールドは回転を帯びながらも膨張し、粒子と粒子の密度を高めていく。


 しかし猶予はなかった。


 上空からの攻撃は、シールドを展開し終えたその直後には、地上への落下を終えていた。


 垂直に到達していた。


 水の粒子と皮膜、その、——懐へ。



 彼女がシールドの形成のみに行動を限定化していれば、あるいは、間に合わなかったかもしれない。


 “戦闘の優位性は、常に連続的な動きの中にこそ、継続して生ずるものだ”


 そう教えられてきた彼女にとっては、シールドの展開はあくまで補助的な役割に過ぎなかった。


 ビルとビルの間に生じた衝撃波は、確かにイノセントが投じたエネルギーの着弾によって生じたものだった。


 しかしその実、着弾した箇所は「地面」ではなかった。



 空中。



 その表層だった。


 エネルギーが不時着し、弾けたのは。



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