最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

第1話 無能の少年と少女

 お前は無能で落ちこぼれだ」

「なんでヒュウガにあんな無能が生まれたんだろう?」

「不吉だ」


 大人や、ヒュウガを知る人間達はボクを見ると、無能とけなして来る。

 ボクがヒュウガの無能と、呼ばれたのは三日前の事。

 ヒュウガはこの国が誇る魔法師家系。ヒュウガ家には決まり事があり、魔力測定だ。

 他の兄弟達は五大元素の魔力を、それぞれ持っていた。


「次はお前の番だクロ。期待しているぞ!」

「はい! お父様」


 ボクはお父様に期待されていると、言われ嬉しく感じていた。

 他の兄弟と比べて、体格も頭も良くはない。

 それでもボクを見捨てる事なく、期待をしてくれている。 

 その期待に応えたくて、魔力測定に挑んだ。

 だが、ボクには予想意外の事が起き、魔力測定器である、水晶は一切光らず、      

 魔力ゼロと表記された。


「え、魔力ゼロ? お父……」

「ちっ、ヒュウガ家の恥知らずめ」

「え?」


 お父様の言葉に耳を疑った。でも冷酷な視線を向けられている。


「ヒュウガ家の無能め」


 ボクはこの日から無能と呼ばれ、家族からも迫害を受け。

 まるで奴隷の様な、生活を強いられた。その生活の中で、兄弟からも虐めを受ける。

 魔法の的当てにされ、毎日毎日ケガの日々、いっその事死んだ方がまし。

 と、言うような生活をしていた。

 だが、すぐにもそんな生活に、終幕を告げられる。


「出て行けクロ、お前はヒュウガに取って邪魔な存在。この家……いや街から消えろ」

「……分かりました」


 お父様の言葉にボクは、素直に従い。

 荷物をまとめて、家いや街から出て行く事にした。

 いざ出て行こうとする、その時、長男であるシンが話し掛けて来た。


「とうとう、お前見たいな無能も消えるのか」

「正々するでしょ?」

「いや無駄に丈夫で、回復力も速いサンドバッグを、失うのは少し痛いな」


 血の繋がった兄弟の癖に、弟をサンドバッグ扱いしてくる。

 血も涙もない兄、だけど、もうそんな生活も関係ない。

 ボクはヒュウガを追放された無能。

 今後一切ヒュウガと、関わる事がない。


「ヴァウ!」

「ベル、お前も短い間だったけど、ありがとうな」


 ヒュウガで、飼っている魔獣のベルにお別れの挨拶をし、家と街から出て行く。街から出て途方に歩き出す。


「うーん! ヒュウガの家から解放されたし、どこに行こうかな?」


 背筋を伸ばしながら、一人言を言い終わってから、歩みを進めようとした。

 そんな時荒い息が聞こえ、背筋が凍る。

 恐る恐る後ろを見ると。ベルの三倍はある体格に鋭い牙、毛並みを持つ魔獣。

 ベオードウルフが二匹も居った。


「くそ! なんで街から出ただけで、魔物と遭遇するんだよ?」


 少しずつ後ろに下がり、カバンの中からナイフを取り出す。家に合った物をくすねて来た物。

 手が震えながらナイフを構える。

 べオードウルフはヨダレを、垂らしボクに近寄って来た。

 やばい、このままだと食われると思った。


「え?」


 ボクは次の光景に驚きを隠せない。

 気高く強さを、象徴されている魔物──が。ボクに頭を下げた。

 一頭だけではなく、二頭の魔物がまるでひざまついている。


「魔物が人に頭を下げるなんて」


 いや──膨大な魔力を持っている者に、魔物達は恐れ服従を誓う。と、聞いた事がある。

 でも、ボクには


「ねぇ君、大丈夫?」

「え?」


 今の自分の状況を整理していた時、一つの声──人間の声が聞こえた。

 声をする方に振り向くと、そこには銀髪の少女。綺麗な水色の瞳が輝いてる顔は、今まで見た人の中で一番顔が整っていた。少女は笑みを浮かべ言う。


「君、ここで何してるってか大丈夫?」

「え? あ、うん大丈夫」


 少女の言葉で自分が、変な状況に置かれているのを再び認識をする。

 この少女は優しいのか、見ず知らずのボクを心配してくれている。ヒュウガの家ではない事。

 ──この少女の優しさに警戒をする。


「グゥゥゥゥ」

「グルルルル」


 二頭の魔物が呻きを出し、少女に襲い掛かろうとした。


「え、なんで!?」


 少女は逃げようとし、体勢が崩れ尻餅しりもちをついた。


「待て!」


 少女はもう駄目だと思い目を瞑る。

 その時、反射でボクは魔物──べオードウルフに待ったを掛けた。

 自分でも何をしているのか、分かっていない。反射的に声が出た。

 自分が襲われるかもしれない。

 けれど今はそれでもいいと思えた。

 次の瞬間、ボクは再び驚きの光景を目の当たりにする。


「あれ? なにも起きてない?」

「止まっている?」


 やっぱり……この魔物は、ボクの言う事を聞く。試して見る価値はある。


「お前らこの場から散れ」


 べオードウルフはボクに、頭を下げ野原を駆けて消える。


「君……何者?」

「ボクにも分からないかな? ハハッ」


 少女は少し引いている。そりゃ引くよね? 分かっていたよちくしょう。


「ふふ、君、面白いね」

「へ?」


 少女の思わぬ言葉に腑抜けた声を、出してしまう。


「ごめん。自分じゃ立てないから、手貸してくれない?」

「あ、うん分かった」


 少女に言われるがままに、手を差し出す。

 少女はボクの手を掴み、立ち上がる。


「ありがとう。君、名前は?」

「ボクは……クロ」

「クロくんか、私はユウナ=リステリ。よろしくね!」


 リステリ、何処かで聞いた事があるが。

 何処で聞いたかは覚えてない。


「まさか、こんな何もない。土地で同世代の子に会うとは思わなかった」

「君──ユウナさんは何処から来たんですか?」

「呼び捨てで構わないよ。私はグロリアから来たよ」


 グロリア? あ、思い出した。

 ヒュウガの家にいる時、勉強の為、色んな書籍関連を読んだ時に、リステリの名前を見た。

 ヒュウガに並ぶ、王国最強の家系。


「君はリステリの令嬢様?」

「リステリの名前を聞いただけで、そこまで分かるんだね」


 ユウナさんは少し、寂しそうな顔をして語る。


「私は次のリステリの当主。ここには商談の為に来た」

「商談?」

「帝国最強の魔法師家系、ヒュウガとね」


 ヒュウガの名を聞いた瞬間。

 ボクの全身は震え、心臓がドクン、ドクンと跳ね上がる。

 どうやら、ボクはヒュウガの名前を聞くだけで、拒絶反応が起きる。

 だけど、それをヒュウガに商談しに行く。ユウナさんに知られては行けないと。思い、作り笑いをする。


「では頑張って下さいね」

「え? ちょっと待って!」

「一体なんですか?」


 出来るだけ一刻も早くここから離れたい。


「クロくんって行く場所あるの?」

「……ないです」

「え?」

「行く場所ないです!」


 少し屈辱感を覚えながら、ユウナさんの言葉に答えた。

 ユウナさんは優しく微笑み、ボクに提案をして来た。


「私の屋敷に来ませんか?」

「従者としてですか?」

「あ、そうなるねハハッ。無理強いはしないよ」


 ユウナさんは慌てながら、ボクに言う。

 リステリの次期当主って事もあるのか。

 年が近い筈なのにボクとは全く違って大人ぽい。


「……ユウナさん。その提案乗ります」

「え、いいの?」

「誘っといて驚かないで下さいよ」


 ユウナさんはボクの言葉に嬉しそうにしていた。

 従者──ヒュウガで奴隷のような。扱いをされていた時よりは幾分マシだと思う。


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【あとがき】


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