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 常田は電話で管理官にマイナから聞いた事を報告している。しばらくすると電話を切った。

「管理官からはそのままタイガーズマンションに行ってくれとのことなんですが、その子はどうしましょう」

 常田は深刻な表情でマイナの方をちらっと見た。

「この子を連れていくのはまずいですよね……。でもここでこのまま帰ってもらうのも私は心配だわ」

「分かりました。じゃあ一旦新宿署に戻りましょう。タイガーズマンションには僕と、他に誰かをつけてもらって行ってきます。草間さんはマイナさんの事をよろしくお願いします」

 常田の決断は早かった。

「マイナさん落ち着くまで私と一緒に居てください。大丈夫。一旦保護するだけ。逮捕とかするわけじゃないからね」

 マイナは黙って頷いた。

「よし。じゃあ行きましょう」

 そう言って常田は車のエンジンをかけ発進させた。


 新宿署まで戻る途中、常田がバックミラーで私たちの方を見ながら話しかけてきた。

「タイガーズマンションに部屋を借り上げてる支援団体って草間さん知ってますか?」

「私が女の子たちに紹介してる中にはないわ」

 私が知る限り、どこの支援団体も歌舞伎町からは少し離れた所、新宿から電車に乗ってしばらく行った街に部屋を借りている。

 歌舞伎町にそういった場所があってもおかしくはないが、タイガーズマンションというのは少し引っ掛かる。


「タイガーズマンションって暴力団員が住んでるような所ですよね?そんな所に支援団体が部屋借りますかね?」

 常田は訝しげなにそう言った。私と同じような違和感を感じているようだ。

「私もちょっと変だなって感じてる」

「支援団体のふりした悪徳貧困ビジネス会社の匂いしませんか?」

 常田の声が真剣味をおびた。

 支援をするふりをして、法外な値段の家賃や食費をむしりとる、弱者を食い物にする貧困ビジネスが横行しているのは確かだ。

「うーん。なんとも言えないけど。その可能性は否定できないかも」

 マイナは話を聞いてるのか聞いていないのか分からないが、放心したように正面を向いていた。


 もうすぐ新宿署に着こうかというその時。無線の受信を知らせる音が車内に鳴り響いた。ノイズ混じりに緊迫した声が聞こえてきた。


〈歌舞伎町タイガーズマンションの一室にて男の遺体を発見。遺体が発見された部屋の住人は高橋ミズキ。二十一歳の若い女。ホスト殺人事件の容疑者と同じ人物の模様。機動捜査隊は直ちに周辺の捜索にあたれ〉


「間に合わなかったか……」

 常田がぽつりと呟いた。私は頭を抱えた。 

 マイナは両手で顔をおおって、再び肩を震わせ泣き出した。

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