第36話  貸倉庫に残されていた物

雄一も食生活を変えなくてはならない。まず肉が食べられない。ビールがない。これだけでも苦痛だ。幸いタバコは吸わないから良いがヘビースモーカーなら大変だ。勿論この時代にもタバコはあるが多分、酷いものだろう。

いま家の中にある調味料や香辛料など、少し残して置かなくてはならない。

この世界だってその道に詳しい人間も居るだろう。パンや玉子焼きの現物を見せたら作れるかも知れない。せめてネットでも繋がればいろんな情報が仕入れられるのに。


しかし、そう都合良く行くはずもなく。雄一は平成の今はどうなっているのかと考えた。タイムスリップしたのは、この敷地と自分だけではないかと思っている。一緒にタイムスリップした人がいるなら、いつの時代に何処に行ったのか? たぶん居たとしても会うことはないだろうか。ここの敷地が消えたのなら跡地はどうなったのだろうか。ポッカリとクレーターでも出来ているだろうか、それとも何の変わりもなく、もう一人の自分が存在するのだろうか? そんな事を考えればキリがないが気にはなる。


雄一はいきなり大きな声で叫んだ。

「あの貸倉庫はどうなっているか二度目のタイムスリップであの貸倉庫が消えてしまったか? 消えたら大変だ」

雄一は貸倉庫に走った。見えて来た確かに貸倉庫はある。だが中までは確認していない。出来れば『どうしたの? 何かあったの』と声を掛けて欲しかった。

しかし人の気配すらない。やっぱり自分だけ過去の世界に放り出されたのか? もはや他人の倉庫だからと言っては居られない。食糧があったら有難く頂く、また平成に戻ったら事情を説明する。いや説明出来るか分からない。その時はその時だ。とりあえず常温倉庫を開けることにした。電動工具を持ってきて鍵を壊して倉庫に入った。

なんと倉庫の中はガランして殆ど何も残ってない。がっかりして倉庫の片隅に軽トラックほどの箱が置いてあった。


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