そうだ、異世界に行こう

甲羅に籠る亀

チュートリアル編

第1話

 テレビ画面にはヨーロッパの様な外国の街並みが映る中には、動物の耳に尻尾が生えた人や耳が笹の葉の様な美しい人、小柄だが身の丈よりも大きなハンマーを担ぐ人や三つ目の人が一塊に談笑する姿や様々な人種がゲームに出て来る様な武器や防具を身に着けて街中を歩く姿がある。


 画面が切り替わり、次に表示されたのは先ほどの一塊で談笑していた四人が大きな翼を持つドラゴンと言える生き物と戦う姿だった。


 そして、剣を振う者、ハンマーを叩き付ける者、弓を使う者、魔法を使う者、そんな四人がドラゴンを倒した姿でまた画面が切り替わる。


 最後に先ほどの四人の様な特別だと一目で分かる装備ではなく、初心者だと分かる装備をした少年と少女の二人が城壁の門を通り抜けるシーンでCMは終わった。


 「おお!!あー早くやりたい!!まだ来ないのかな!!」


 先ほどまでテレビに映し出された映像を思い出して、僕は抱いていたクッションを力強く抱きながらゴロゴロと畳を転がって行く。


 今日は先ほどやっていたCMのゲームがゲーム機と一緒に届く日なのだ。


 一体いつになったら届くのかと待ち遠しくて堪らない僕はまだかまだかと待ち望む。


 「12時にスタートするのに!!まだ届かないのかよー!!早くしろー!!」


 時計の針が10時30分を示しているのが見えながら待っていると、「ピンポーン」と玄関チャイムが鳴る音がする。


 「来た!!はーい!!いま行きまーす!」


 バタバタと走りながら玄関まで向かい、玄関の棚に置かれている印鑑を手に取ると、僕は玄関の扉を開けた。


 「新庄葵様で合っていますか?」


 「はい!そうです!」


 「ではこちらにハンコをお願いします。」


 出された紙に僕はすぐに印鑑を使ってハンコを押すと、配達員の男性から先ほどハンコを押した紙の一部を手渡される。


 手渡された紙を僕は玄関の棚に置いて二人係で運んでいる物に目を向ける。


 あれに世界初のVRMMOをやる為のゲーム機コクーンが入っているのかと見ていると、コクーンを置く為の場所に案内して欲しいと言われた。


 「い、今から案内しますね!こっちです!!」


 両親が建てた二階建て一軒家の我が家にある二階の自室へと僕はコクーンを運んでくれている配達員の人たちを案内する。


 「この部屋のあの場所に設置してください。出来ますか?」


 「あそこですね。可能ですよ。今から設置して行きますね。」


 「はい!よろしくお願いします!!」


 ああ、やっと待ちに待ったゲームが、それも世界初のVRMMOなんて特別なゲームが出来ると、僕は浮かれながらテンションが高くなってしまう。


 箱から取り出されたコクーンは二メートルを超える様な大柄な人でもすっぽりと入れるほどの細長い卵型をしている。


 あれがコクーンなのかと、あれを起動させれば世界初のVRMMOであるアナザーワールドオンラインが出来るのかと、ワクワクが止まらない。


 配達員の男性たちがコクーンの設置が終わるのを待つ間、僕は配達員の人数分の飲み物の用意を行なっていく。


 今の季節は夏な上、今年は異常気象で普通に30℃を超える気温だから部屋の中はエアコンを付けているが、部屋が涼しくても暑かっただろうと思い渡すと、やはり喉が渇いていた様ですぐに飲み干している。


 「ありがとうございます。あと少しで終わりますよ。」


 「そうなんですね!頑張ってください!」


 飲み干されたコップをお盆に乗せて早く設置が終わらないかと、ワクワクしながらコップを流しに置いて二階に上がり自室へと戻ったタイミングで設置が終わったと教えられた。


 「ありがとうございました。」


 「いえ、仕事ですから。」


 配達員たちを玄関まで見送ると、僕は玄関の鍵を閉めて急いで二階に戻った。


 「時間もあと一時間しかない!!早く設定とかしないと!!」


 二階の自室にあるコクーンの前に立つと、僕はコクーンの蓋を開く為にボタンを押してコクーンを開ける。


 「事前にコクーンの事を調べて置いて良かった!!」


 コクーンを設置している時間で説明書を読んでいた為、簡単にどうすれば良いのかが分かる。


 コクーンの中に入ると僕はコクーンに備え付けられた柔らかな素材に横になりながら、この柔らかな素材を身体全体で味わう。


 「身体を包み込む柔らかさだ!人を駄目にするクッションみたい!!」


 あまりの柔らかさについ夢中になりそうになる中、どうにか意識を取り戻した僕はコクーンの蓋をして内部に備え付けられたヘルメットを頭に被って起動する。


 「うわっ!!」


 すると、ヘルメットを被ってすぐに、僕の足元から頭上まで一気に緑色の光のレーザーが通り過ぎて行く。


 あれで僕の身長や体型を測れたのかと思いながら、次にコクーンは移行する。


 次に行なわれた設定は住所や名前、年齢に銀行口座などの多岐に渡る様々な設定を行なっていく。


 このアナザーワールドオンラインはゲーム内の素材を日本円などの現実世界のお金へと変えることが出来るのだ。


 その為、銀行口座などの様々な設定をする必要がある。その様な設定を終わらせると、時間はあと20分ほどでゲームが始まる12時になる。


 この20分の間に僕はトイレや軽い食事を済ませて行き、ついでに洗い物を終えて二階に上がって行く。


 自室のコクーンへと入り、いつでもコクーンを起動させられる様にしながら時間を待っていると、時間が12時になった。


 「時間になった!!!コクーン、起動だッ!!!」


 ヘルメットを被ってコクーンを起動させると、僕はアナザーワールドオンラインを開始した。


 「うわぁあーーー!!!!」


 アナザーワールドオンラインを開始したと同時に、僕の意識は薄らいで行き何処かへと飛ばされるのを感じた。


 そして、意識が戻った時に僕が見た物は、真っ白な何もない何処までも続いている広い空間だった。


 意識が薄らいで吸い込まれて飛ばされる様な初めての経験だった為、驚いて叫んでしまい心臓がバクバクと音を鳴らしているのを、もう既にゲーム内に入っているのに感じる。


 「何で心臓が鳴っているのを感じるんだろう?」


 不思議に思いながら視覚や聴覚に触覚の三つがある事も実感しながら、これなら他の感覚もあるのだろうと思っていると、何処からか優しそうで綺麗な威厳のある女性の声が聞こえて来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る