第6話 検査予約

 診察は昨年の初診の時とおなじS先生だ。


 CT画像の上にスケールが走り、腎臓のサイズを測っている。

 ちらりと覗き見たモニターに170mmという数字が見えた。

 大きいのかどうなのかよくわからない。

 孤発性ADPKD疑いの文字もある。

 家族歴がないし、脳MRIも異常なし。なので「疑い」なのだろう。


「腎臓の大きさは去年と変わってないね」


 じゃあ、なんでこんなにお腹痛いんだろう。

 ご飯食べられないんだろう。


「穿刺して嚢胞の水を抜く方法はあるけど、感染症のリスクが上がるからあまりおすすめできない」


 穿刺吸引は腎臓の嚢胞? 肝臓嚢胞? どっちだろう。


「他にも動脈塞栓術という方法があるけど、できる病院が限られてる」


 あ〜それ知ってる。

 都内のTG病院が有名らしい。

 腎臓の場合は塞栓術=廃絶のため、透析にならないとできないけど、肝臓は再生するし、それに関する症例報告見た。

 東京か。面倒だな。


「穿刺吸引、うちの放射線科の先生がやってくれるかどうか……うん、まぁ検査してから良い方法を考えよう。ところでH病院の先生、紹介状書いてくれなかった?」

「経過観察と血圧をTクリニックの先生に診てもらっていたのもあって、T先生に相談するようにと言われ……まぁどこの業界もいろいろ人間関係とか難しいのかな? って勝手にゲスパーしてました」


 そういうと、S先生は苦笑を浮かべながら「まぁね」といい「今後は半年に一度ウチで診るようにしよう」と言った。


「食道や胃に異常がないか確認のため、胃カメラをやりましょう。胃に問題があれば胃薬とか出すし。CTだけじゃ状態が詳しくわからない」


 胃カメラ……19才ぐらいのころに受けたけど、苦しかったことしか覚えてない。できることなら、もう二度とやりたくないと思っていた。

 とはいえ、心窩部の痛みが胃なのか嚢胞なのかわからない。わからないなら調べるしかない。


 その場で胃カメラと腹部MRIの検査予約と、検査結果を聞くための再診予約をとった。


 診察後に医療事務のお姉さんから、胃カメラの事前説明を受ける。


「うちは口からで喉に麻酔をしてからカメラを入れます」


 あ〜はい、苦しいやつだ。

 嫌だなぁ。一度でいい。苦しくないと言われる、眠っている間に胃カメラ経験してみたい。


 その後は感染症の検査の為採血を行い、院内タリーズで大好きなハニーミルクラテを買って帰った。

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