第26話 頼りになる魔法使いと協力!

「ルーカスくん、危険。敵の一部が私たち先頭集団に狙いを定めてる」


 エレナさんは顔を引き攣らせている。


 緊張しているのか?

 発動に時間が居る魔法師団まほうしだん特性上とくせいじょう、これ程に敵と肉薄にくはくする機会はなかったのかもしれないな。


 だが――。


「――はははっ! これぞまさ致命的ちめいてき一打いちだ! かもねぎを背負って来ましたよ~! エレナさん、魔法のレジストは頼みました! 貴女に俺の背中を預けます!」


「ん。わ、分かった!」


「その代わりに――俺はエレナさんの道をひらやいばとなる!」


 俺は素晴らしい好敵手こうてきしゅと刃を交える名誉めいよに――そして、軍としても最良さいりょうに繋がる展開に、笑いが止まらない。

 新たな指揮官、指揮系統の再統合さいとうごうから間もなく、率いている手勢はわずか。


 このような好都合――2度とない機会だ!

 俺の技量は今だ道半みちなかばで未熟みじゅくだが、この好機こうきを逃してはならない!


「こんな敵陣深く入り込んだの、私は初めて。……見渡すばかり敵だらけ」


「怖いですか?」


「……正直」


「それなら、俺の背を見ていると良いです」


「え? ルーカスくんの背中?」


「はい。俺の背中をです! 俺は未熟の身だろうと、臆すこと無く敵の前に立ちましょう!」


 しばらく、寄る敵を打ち払い続け――魔法の軌道きどうを避け、避けきれなければ魔力を込めた剣で飛来ひらいする魔法をらす。


 これは――新たな経験、良い学びだ!


 俺たちは止まらずの進軍を続けて行く。

 戦闘で道をひらく俺も、一歩たりとも引かない。


 後ろには、俺を信じ付き従う者がいるのだ、先頭に立つ俺が引ける訳がない!

 自分の覚悟に背水はいすいじんく事で、未熟な心身しんしんを奮い立たせよう!


 俺たちの目標へ――一心に向かうのみだ!

 すると、背後からエレナさんの声が聞こえた――。


「――凄く怖いのに……。何処どこか余裕があるルーカスくんを見てると、大丈夫なんだって安心する」


 余裕、か。

 エレナさんからはそう見えるのかもしれない。


 魔法には慣れていないけど……俺は戦場の空気自体には慣れてしまったからな。

 斬った斬られたも、周囲が冷静を失う戦場の異常さにも――だ。


 その精神から来る立ち居振る舞いが、余裕に映っているのかもしれない。


「俺は無学文盲むがくぶんもうな男ですからね。書物しょもつで学んでいない分、戦場での実戦経験を人以上に伸ばすよう努めるばかりですよ!」


「……魔物じゃなく同じ人間によって、命が簡単に脅かされる。異常な場所……戦場、それも先頭。……不思議な感覚。ここは、この位置は……胸がドキドキする」


 胸がドキドキ?

 戦場で身体が震え、すくむのなら分かるが……。


 エレナさんは、人殺しで胸がときめく異常者だとは見えないけど……。

 表現の仕方の問題なのかな?


おびすくまないのは大した物です! 戦場特有の昂揚こうように精神を飲まれぬように。エレナさんの冷静で聡明な魔法のレジスト。信じておりますよ!」


「……ん。嬉しい」


 エレナさんの不足する経験は、俺が補おう。


 しかしエレナさんの魔法使いとして優れた部分は、大いに魔法技能が未熟な俺を助けてくれる。


 そうして助け合い、平等に高め合うことで――人は互いに成長していくのだ。


 エレナさんはまだ若く、伸び盛りだしな!

 おっちゃんとして、若者を死なさないように気合いを入れねば!


「命を惜しむなら、退け! 俺は名誉にかけ、先頭から脱落したりはしない!」


 俺を狙う魔法使いの攻撃も――感動する程に練度が高い魔法使い、エレナさんの手によりレジストされている。


 迫り来る魔法が眼前で花火のように弾ける様は――圧巻あっかんだな!


 いやぁ長生きは……いや、色々な経験はするものだね。

 エレナさんは、しっかり冷静に対処している。


 なんて頼もしく、戦場で背中を預けられる方なのだろうか。

 おっちゃんだと言うのに、この早撃ち魔法の迫力と美しい光景には――胸が躍り踊る!


「バーゼル伯爵、ここはお逃げください!」


「バカを言うな! ここをやられたら終わりだ! 引くんじゃない、早急に全員を集めろ!」


「はっ。し、しかし……完全な不意打ちに、電光石火の行動で我が軍は――」


 そうこうしているうちに、敵兵の主力の喉元のどもとに――俺たちは食らいついた。

 暗い闇の中、沢山の護衛が松明たいまつに火をともしている。

 その清潔で立派な身形みなり、的確な問題把握。


 まさに、敵の新たな指揮官――。


「――バーゼル伯爵! お覚悟を!」


 ここで新たに挿げ替えた優秀な首を切り、戦時物資の備蓄を叩ければ――まさに敵への致命打ちめいだ


 前線へ贈る物資は無くなり、大量に敵本国から送り込まれている兵たちは冬越えを考え撤退を余儀よぎなくされる。

 敵兵にも職業軍人は少ないだろう。


 多くの民を護る為に、義が対立した指揮官を狙い討つのが――俺の大義だ。



―――――――――――

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