第45話 おじさんの超広範囲殲滅爆裂魔法剣が決まる


「勝ったな。がははっ!」



 俺はリリムの真似をして笑ってみせた。

 これにはさすがのリリムもツッコミを入れてくる。



「なにを笑っておるのだ! もうおしまいだぁ。ワシさまたちの冒険はもはやここまで。ジ・エンドなのだ」


「リリムらしくないな。虫の大群に怯えてるのか? 諦めるのはまだ早い。そうだろ、エリカ?」


「打てる手はいくらでもあります。無限に魔力が湧き出すリリムちゃん、それとタクトさんの協力があれば」


「もちろんだ。リリムも気張れ。せっかく手にした第二の人生、こんなところで終わりたくないだろ?」


「確かにまだ食べてない美味いモノがたくさんある。死んでも死にきれぬな!」



 リリムは気合いを入れ直して【ブラッディソード】を構える。

 そうしてる間にも子蜘蛛が屋根を登ってくる。

 俺は無銘で蜘蛛を切り捨てながら、エリカに問いかけた。



「作戦はエリカに任せる。俺らを上手く使ってくれ」


「わかりました。リリムちゃんはワタシに魔力を注いでください。その魔力を使って敵の動きを鈍らせます。バグっても本能には逆らえないはず。昆虫は炎と冷気に弱いですから」


「リリム。しっかりとエリカを護れよ。敵に近づかれたらこの作戦は終わりだ」


「ワシさまタワーディフェンスは苦手なのだが、やるしかないか!」



 リリムは子蜘蛛を蹴散らし、エリカを護るような位置取りを心がける。

 リリムはやればできる子だ。ここは任せよう。



「タクトさんは敵の動きが鈍った隙を突いて【アトラク=ナクア】にトドメを刺してください。いまのワタシにできる最大火力の魔法剣を無銘にかけます」


「ブースト魔法剣をお見舞いするんだな」


「タクトさんならやってくれると信じています」


「そこまで期待されたんじゃ、おじさんも気張るしかないな」



 子蜘蛛の進行が止んだタイミングを見計らい、エリカに魔法をかけてもらう。

 魔力を充填させた無銘を握りながら俺は二人に声をかけた。



「準備完了だ。いくぞ、二人とも!」


「はい!」

「おう!」


「まずは小手調べだ。【スラッシュ】!」



【ムーブ】で屋根の間を飛び交いながら、隙を見てブーストスラッシュを放つ。

【アトラク=ナクア】は空中に魔法陣を描き、衝撃波を時空の彼方に消し去った。



「テレポートで攻撃を消し飛ばした!? そんなのありか!?」


「クスクスクス……」



 ブーストスラッシュは物理攻撃でなく魔法攻撃扱いなのかもしれない。

 面倒だが直接ぶっ叩くしかないか……!



「タクト! 上からくるぞ気をつけろ!」



 リリムの忠告通り、今度はジャイアントモスキートが攻撃を仕掛けてきた。

 臀部でんぶの針で俺を突き刺そうとする。



「うっとうしい蚊だ!」



 俺は攻撃を回避して【ソードカウンター】で相手を切り刻む。

 蚊蜻蛉は体を霧散させると、トランスウォーターの小瓶をドロップした。

 こいつらも元は人間だが、慈悲の心で手を緩めたらミイラ取りがミイラになる。

 なにより……。



「ジャイアントモスキートの針に気をつけろ。刺されたらモンスター化するぞ!」



 周囲を漂う蚊蜻蛉を切り裂きながら、リリムとエリカに呼びかける。

 ジャイアントモスキートは汚水を吸い上げて腹に蓄えていた。小瓶をドロップしたのは体内にトランスウォーターを溜め込んでいたからだ。



「にゃにーーー! ただでさえキモいのに厄介なヤツめ!」



 リリムは文句を垂れながら蚊蜻蛉を蹴散らして、屋根を這い上る子蜘蛛に応戦。

 必死にエリカを護っている。



「エリカ、魔法はまだかっ!?」


「もう少し耐えてください。思ったより制御が上手くいかなくて」


「クスクスクス……」



 【アトラク=ナクア】は鐘撞き堂の上で魔法陣を操作していた。

 背後にある【運命の石】から魔力が溢れ出しているのがわかる。

 テレポートの魔法陣は魔法攻撃を時空の彼方へ飛ばす。魔力的な力場が揺らいでいるのだろう。

 魔法のことは正直よくわからない。だから――



「攻撃あるのみだ!」



 難しく考えるのはやめよう。

 仲間を信じて脳筋おじさんはボスに向かって剣を振りまくる。



「【ダブルスラッシュ】!」



 広範囲のブーストスラッシュを放ち、【アトラク=ナクア】に牽制を試みる。



「……っ!」



 テレポートの魔法陣では二重の衝撃波を防ぎきれなかったのか、【アトラク=ナクア】は一瞬だけこちらに意識を向ける。

 すると周りにいた子蜘蛛が肉の壁となり、母体への直撃を防いだ。



「護られてばかりで情けないボスだな!」



 相手に挑発は届かないだろう。だが、波状攻撃は有効なようだ。

 【ダブルスラッシュ】を連続して放ち、【アトラク=ナクア】の注意を引きつける。



「ギィィ!」



 余裕がなくなってきた【アトラク=ナクア】は、防御に専念しはじめる。

 子蜘蛛とジャイアントモスキートの肉壁に加えて、魔法陣で衝撃を打ち消す。

 そうしている間に――



「力場が安定しました! いけます!!」



 エリカが魔法の杖を掲げ、貯めていた魔力を解放した。



「【絶界の氷棺アイスコフィン】!」



 ――――ヒュオオオオオオオオウ!!!!



 エリカの足下を起爆地として大寒波が街を包み込む。

 足下に広がる汚水が一瞬にして氷結。猛吹雪に飲み込まれた子蜘蛛は物言わぬ氷像と化し、周囲を舞っていた蚊蜻蛉も冷気で動きが鈍りはじめる。



「さすがはエリカ! 街を一瞬にして凍らせたのだ!」


「バグモンスターには足止めにしかなりません。階段を作りました。タクトさん、今のうちに!」


「助かる!」



 魔法により氷の階段が発生。鐘撞き堂までの最短ルートが築かれる。

 俺はムーブで階段を駆けのぼり、【アトラク=ナクア】に肉薄した。



「おまえを護る壁はもうないぞ!」


「ギィィ!」



 【アトラク=ナクア】は慌てて運命の石を掴むと、自身をテレポートさせるための魔法陣を描く。自分の命よりも宝を優先させた。その一瞬の判断が命取りだった。



「遅ぇよ!」



 俺は【アトラク=ナクア】がワープするよりも先に、魔力をたんまりと溜め込んだ無銘のブーストスキルを発動した。




「【バーストスラッシュ】ッ!!!!」



 超広範囲殲滅爆裂魔法剣【バーストスラッシュ】。

 それは【エクスプロージョン】と【パワースラッシュ】を組み合わせた魔法剣だ。


 どこに逃げようが関係ない。というか逃がさない。魔法陣でも防ぎきれない。

 エリカが無銘にかけた魔法剣。そのベースとなったのは、レジェンドと謳われた伝説の魔法使い【爆炎のフィーレ】直伝の戦略級殲滅魔法だからだ。


 

「ギ………………」



 断末魔さえ許さない。一瞬の静寂の後――




 ――――ズガアアアァァァァァァンッッ!!!!




 目映い閃光と共に大爆発が起こり、【アトラク=ナクア】を含めた灰の都を包み込むすべての魔物は一瞬で消し炭となった。





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バーチャルアイドル リリムちゃんの宣伝コーナー

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 リリム「灰の都のクエストクリアなのだ! 次回、怪物の後始末とこれからの旅について相談するぞ。話は一段落するので最後まで読むのだ」


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