バーン王国の田舎者〜危険な王都の片隅で、新品種のジャガイモ(父作)と田舎仲間を相手にのんびりまったりスローライフ!?

花邑 肴

第一章 最悪な船出

真っ赤なインク

 不安と共に引いたくじ引きの棒の先に、真っ赤なインクの色を見た瞬間。

 ミリアは頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を覚えた。

 頭の中と両の眼がぐるぐる回り、まるで自分の体が自分のものではないかのような感覚に襲われる。


 どこをどう歩いたのか。


 気が付いた時には家に居て、小さな家の小さな居間では両親と妹二人が頭を突き合わせ、沈痛ちんつうな面持ちで項垂うなだれていた。

 その家族の絶望ぶりと重苦しい空気から、改めて「自分はくじに当たってしまたのだ」という事実に思い至り、自然と目から涙が、口元から嗚咽おえつが漏れた。

 

 くじの当たり。


 それは、ミリアが王都からの要請により、「王都に強制移住する島民・十人」の一人として、村から送り出されるということなのであった。

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