怪異を殺した少女が一人

霧裂 蒼

怪異を██た少女が一人

第1話 始まりのチャイム

 高二の九月二十日の木曜日。その日の四時限目は現代国語の授業で、とても退屈なものであった。妖怪と現代文化といういかにもつまらなさそうな単元。これを授業で詳しくやったとしても意味はないだろう。定期テストは教科書さえ読めば何とかなる。そう考え、ある程度板書の通りにノートをまとめ、適当に国語教師の金原かねはらの話を聞く。ふと目の前の学校支給のタブレットをつけると、時刻は授業終了の三分前となっていた。早く終わらないかと考えてた時、一人の男子が騒がしい声で目の前の金原に質問をした。


「先生!! 妖怪と怪異って何が違うんですか?」


 恐らく、最近の噂で怪異という言葉が頻繁に出てきたから気になったのだろう。授業後に聞けばいいと思うが、周りの生徒はその男子に同調して金原の回答を待ち望んでいる。そんな状況なので口を挟まずに見守っていることにした。金原は辺りを見渡し、無視するのは不可だと悟ったのか、ため息混じりに口を開いた。


「妖怪も怪異もほぼ同じだ。怪異の方がくくりがひろいがな」


 あまりにも適当過ぎる説明に、クラスからは不満の声があがる。


「もっと詳しく教えてくださいよ!!」

「自分のタブレットがあるだろ? それで調べろ。それじゃあまとめにもどるが」


 金原が言葉を言い終える前に、授業終了のチャイムが鳴り響き、先の言葉を妨害した。金原は"今日でこの単元を終わらすはずだったのに"と呟き、日直に号令をさせ教室から去っていった。私は、先程先生が言っていたように、自分のタブレットで調べはじめた。金原の雑な説明を聞き、少し興味が湧いたのだ。


 検索にかけてみると、あっさり疑問の答えが見つかった。"妖怪とは、怪異の現象等の影響をキャラクターしたものであり、怪異とは道理で説明がつかないことである。そして"その先に書かれた一文を誰にも聞こえぬように呟いた。


「化け物のことである……か」


 私は、何事もなかったかのようにタブレットの電源を落とし、手を洗いにトイレへと向かった。手を洗っていると、別のクラスの女子が怪異の噂と共に、最近近くで起きている殺人事件について話していた。


「怖いよね……隣の高校でも最近一人死んじゃったんだって」

「女性しか狙ってないってちょっとキモいし……私も狙われたらどうしよ」

「ほんと、もう家に引きこもってたいよ」


 犯人の目処がついていないこの連続殺人事件がいつになったら解決するのか。私は、自身を狙うわけ無いだろうという謎の自信をもってこの場を後にする。ふと時計を確認すると、調べものをしていたせいもあってか何時もより時間がおしていることに気付いた。そして、足早に弁当を持ちながら友達の柚がいる教室へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る