第12話

自室に戻ったとたんに、一気に気が緩んだ。前世の記憶を思い出す前の自分と同じように振る舞えているか、家族と話している間ずっと、内心ではビクビクしていたのだ。折角できた新しい優しい家族に気味悪がられたり、変人扱いされたりされたらたまったものじゃない。レジリオに、自分が転生者だと家族に話しても大丈夫か聞いておくべきだったと今更ながらに後悔してため息をついた。



「………フゥ」



「レイヒ樣?どうなさいました?」



弟達に抱きつかれた時に乱れた髪をといてくれていたクラウスが、私の小さなため息を聞き取って問い掛けてきた。


心配そうに顔を覗き込んできたクラウスに、何でもないと言いかけて暫し考え込んだ。


(クラウスに話してみようか?彼が、これから先も私の側に居続けてくれるなら、隠し通すのは難しいだろう。後でバレて信頼を失うよりは、早いうちに話した方が…………)



「レイヒ樣?」



思考の海に沈んでいた意識が、クラウスが再び私の名を呼ぶ声で引き戻された。

先程よりも心配の色を強くしたクラウスの表情に、これはもはや、何でもないでは誤魔化せないなと思い、真っ直ぐに彼の瞳を見つめ、自分が転生者であると告げることを決心した。


「クラウス……大切な話がある。聞いてくれる?」



【 クラウスside 】


今日は私の主であるレイヒ樣の5歳の誕生日。

いつも通りの時間に朝食のために、部屋までお嬢様を迎えに行ったのですが、部屋を出てから、少しお嬢様の様子が可笑しいことに気づきました。

何やら考え事をしているようです。


ご家族の前ではいつも通りのお嬢様だったのですが、ご自分の部屋に戻ると、再び考え込んでしまいました。お嬢様が物心つく前から側に居りましたが、今までこんなことは無かったものですから心配です。

とはいえ、恐らく無意識なのでしょうが、そんな姿を自分にだけ見せてくれているということは、それだけ信頼されていると思えて嬉しいものです。


レイヒお嬢様の憂いを張らすためならば私はなんでもいたします。ですからどうか、不安そうな顔をしないで笑ってください。

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