第一章 異世界と五歳の誕生日

第6話

麗氷が異世界へ送られてから五年後。


「さぁ、目覚めの時間だ。麗氷」


そんな声が聞こえて、私は目を覚ました。そして私を起こした存在に目を向けると、綺麗な笑顔を見せるレジリオが立っていた。


「おはよう、麗氷」


「…おはよう、レジリオ。……ここは?」


「貴族の中でももっとも力を持つオパール家の屋敷にあるお前の部屋だ。お前の今の名前は、レイヒ=オパールだ」


レイヒ=オパールかなんか違和感あるな。名乗るときに間違えなくてすみそうだからいいけど。っていうか貴族って……面倒臭そうだなぁ……


「オパール家は一番お前に合った家だぞ。人柄的な意味でも、属性的な意味でも」


「どういう事?」


「オパール家は偏見を嫌う。他の貴族達の中にもそういった家があるが、オパール家は特にその傾向が強い。そのうえ基本属性すべて持っていても不思議に思われないのはこの家だけだ」


「成る程。チートな力を持った私にはぴったりだって訳か」


「そう言うことだ。それと、今日はお前の五歳の誕生日だから魔力測定がある。」


「魔力測定って……私、魔力がどんなものかも分からないんだけど…」


「だからこそ、俺が来たんだ。今からお前の魔力を解放する。内から湧き出る力を身体の中で巡らせるイメージで抑えろ」


「あぁ…今は封印されてるから分からないだけか」


「そう言うことだ。…始めるぞ」


「いつでもどうぞ」


そう答えると、レジリオは私の額に触れた。その瞬間、恐らく魔力だろう強い力が私の中から溢れ出した。その余りにも大きすぎる力に、思わず顔をしかめたが、レジリオに言われたとおりに身体の中で巡らせて押さえ込んだ。


「………ふぅ……」


「大丈夫か?」


「なんとかね……予想以上にキツいわねこれ……」


「お前の場合は特にな…そろそろ呼びに来る頃だろう。結界を解いて俺は帰るぞ。何かあったら念話しろ。お前なら難なくできるだろう」


「了解。ありがとう、レジリオ。またね」


私がそう言うと、レジリオは少し驚いた顔をしてから綺麗に笑った。


「あぁ。またな、麗氷。幸せになれよ」


その言葉を最後にレジリオは、突如現れた扉を開け、その向こう側へと消えていった。そして、レジリオが入るとひとりでに閉じた扉は、光の粒子となって消えていった。

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