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思えば、熊から直接連絡が来たのは初めてな気がする。3年前くらいの同窓会で連絡先は交換したものの、最近合コンで何度も会っているけど、1度も連絡を取り合ったことなんて無かった。内容は、まあ、取り留めもないことだった。あってもなくてもいいようなこと。



「柚葉、明日は行くの?」



朋が私に問いかける。そう、また合コンだ。それも熊がいるから私に声が掛かっているのだと思う。



「うーん、悩むね。」


「悩むの?」


「柚葉、なんかあった?」



今日は焼き魚に煮物の定食。麗奈は本当になんでも作れるし、本当に美味しい。思えば、朋と悠梨亜の作った料理は食べたことがない。だから、上手いとか下手とか知らない。私も作ったことないけど。私の料理なんて麗奈と比べたら食べれたものじゃないと思う。



「何も無いけど。」



本当のところを言うと、何も無い訳では無いけど言うほどのことではない、というのが正しいと思う。合コンに対して、どちらかと言えば前向きな返事をしたのは確かに初めてのことだと思う。だからみんな驚いているのだろうけど。


熊から来たメッセージの内容は「また金澤に合コンセッティングしてくれって頼まれた。篠原来てくれないと俺喋る人居ないからよろしく。」と言うような内容。それを言われたところで私なんて行っても行かなくてもどっちでもいい様な存在なんだろうけれど。なぜなら、熊の相手をするだけで、私にいい男が巡ってくるチャンスなんて無さそうだから。



「そういえば、最近桃はどうしたの?」



悠梨亜が私に向かって聞いた。すると朋が、そうじゃん、と言って興味ありげに私の方を向く。これはあまり聞かれたくないこと。



「うん、まあまあかな。」


「嘘じゃん。最近会ってないでしょ?」


「会ってはいるよ。してないだけで。」


「なんで? 柚葉断ってるの?」


「うん、まあ。」


「まじかよ。やっぱ合コンじゃん。」


「桃は辞めよもう。切り時だよ。」



何も言ってないのに、私の表情で察したかのように3人が口々に次を促す言葉を言う。実際のところ、そうしたいという気持ちが大きいのだけれど、そう簡単に次にということが出来るなら私もうじうじ悩んだりしていないのだ。



「とりあえず次の合コンは柚葉参加ね。熊に言っとくから。」


「熊、今度こそ攻めて来るんじゃない?」


「柚葉、弱々しい女を演じるのよ。」


「だから、熊は無いって。」


「いや、あるね。」



何の根拠も無いのに自信満々な顔して言う悠梨亜に呆れてしまった。

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