春馬と宝石探し


「おまえ、ほんとうに、そういう遊びすきだよなあ?」


となりで黄原があきれた顔で俺をみていた。


どうやら俺の手の石を見ていたらしい。


「お前って、ほんとうに猿みたいだよな?屋根には登るし、なんか渡せば、とりあえず遊んでるし?野生っていうか、動物園の猿だよなあ?」


たしかに。


俺はたぶん野生では、もう生活できない。


ーたぶん?


人間の野生って、どうなるんだ?


そもそも人間の野生って、なんだ?


ー?


頭が相変わらず、ぐるぐるしていたら、


「そんなお前に、お土産だ。ほら?」


黄原がポケットから取り出したのは、半透明の、


ーなんだ?


「この間、従兄弟たち家族と行った遊園地で、宝石探しってアトラクションがあって、チビたちにつきあってやったんだ。ほかはチビたちにあげたけど、これはお前が好きそうだなあって、土産にやるよ」


「…ありがとう」


俺は素直に礼を言った。


形や透明感からして、人工物かな?だけど、


ー遊べる。


めちゃくちゃ嬉しい。黄原がまたあきれた顔になる。


「お前、将来、外国で鉱石探してそうだな?」


「俺、英語苦手だから、外国行かないぞ?」


「勉強自体、やらないだろ?竜生先輩みたいな兄貴がいたら、大変だよなあ」


「えっ?大変なのか?俺?兄貴じゃなくて?」


「まあ、竜生先輩も大変だろうけど。いや、竜生先輩が大変かな?」


黄原が首を傾げる。俺は黙ってた。


だって、できの悪い弟をもつ兄貴は大変だろう。


そんなの俺でもそう思う。


あの日、俺に不思議を教えてくれたじいちゃん。


ーほら?お前だけの宝物だぞ?


そう石をくれたじいちゃん。


「宝石探しって、石拾い?」


「名物の温泉を利用してやってたな。水槽のでっかいやつみたいなかんじだよ?ほんとうなら、川とかなんだろうけどさ。水流はなくて子供達がとりやすく工夫されてたよ?」


「そっか」


「いつかお前も家族、いや、彼女とかと遊びに行くんじゃないか?」


「俺には、異世界人は理解できない」


「なんで異世界だよ?俺こそ、すでにお前が異世界人だ」


ーだよなあ。


黄原の言葉に俺は納得していた。異世界人と異世界人なら、ふつうにカップルになるんだろう。


そして、いつかはファミリーになるんだろう。


俺の手のひらで、ちっぽけな石が不思議な景色を俺に見せてくれる。


だけど、


俺は黄原かくれた半透明の、いや透明感がある石を手のひらであそふ。


さっきよりくっきり、


ー光の三原色がでる。


きれいだなあ。


くっきり、でる光。


鮮やかな、


青。


緑。


赤。


「宝石探しかあ」


懐かしい言葉だ。


そういえばあの時、なんでじいちゃんは、あの粉を使ったんだ?


不思議に思って、


「なあ?バスでスマホ使ってよかった?」


「いいだろ?みんな使ってるぞ?写真とってるし」


なら、いいのかな。おれがポケットから、スマホをとりだしたら、


「おっ?写真とるのか?」


「いや、片栗粉」


「へっ?」


「片栗粉を調べたいんだ」


「なんで、このタイミングでだよ⁈」


だって、宝石探しで思い出したんだ。


ー昔、じいちゃんとした、


宝石探し。


俺がじいちゃんに氷河の作り方をきいて、じいちゃんが流しカキ氷をしてくれて、


ー喜んでたべまくり、あたりまえに、腹を下した。


あの時、下痢ばかりで、なんも食べれなかった俺をみて、じいちゃんが片栗粉で、不思議な食べ物を作った。


片栗粉と砂糖、水を鍋って煮て、ある程度、かたまって、透明になって、


ーみろ?春馬、宝石探しだ。


ボールにたくさん氷をいれた冷たい水に鍋のかたまりをいれて、俺に探させてくれたけど。


ーあれ?なくなった?


じいちゃんがキョトンとした。


俺も、冷たい氷水に手をつっこみ、キョトンとなった。


あれ?この辺にじいちゃん、いれたよなあ?


ようは、冷める前に熱々をいれたじいちゃんだったから、


また氷水でひやしたから、ふつうに、逆再生みたいになる。


ただ、やわらいい透明なそうめんみたいなやつがすくえて、冷たいボール中を夢中になって探した。


やわらかく、透明な不思議な食べ物は、きな粉で美味かったけど、


ー下痢は治らなかったな?


じいちゃんは片栗粉の成分をみて、


ーすまん、間違えた。


なにを間違えたんだ?


スマホで片栗粉を検索して納得した。


いまは材料が違うんだ。


本来なら多年草のカタクリ。


ー春の妖精。


とも言われるらしい。一年間でわずか2ヶ月くらいしか地上にでない。


ースプリング・エフェメラルと呼ばれる植物のひとつ。


エフェメラル。


ーはかない命。


かあ。


春先にしか地上にでて光合成をしない。


夏には葉を枯らし、翌年の春までまた休眠して、


光合成ができる期間が、1年のうちでわずか2か月ほどしかないため、栄養を蓄積するまでに長い時間を要してしまうことから、種子から発芽して花を咲かせるまでに8、9年ほどの歳月を必要とする。


ー不思議ない植物は、たしかに。


開花初期は開花と結実がある有性生殖と結実がない無性生殖を繰り返し、個体が大きく成長した後は複数年に渡り開花が継続する。カタクリの平均寿命は40 - 50年ほどと推定されている


めちゃくちゃ長生きだなあ。


少しずつ力をエネルギーをためて、やがて花を咲かせ、


ー咲かせる。


また、今年も咲く、のかな?


いまの時期かな?


不思議な多年草を記事をおっていたら、


ーカタクリから採取したデンプンは片栗澱粉(かたくりでんぷん)といって生薬になり、滋養保険によく、クズのデンプンのように腹痛や、体力が弱った人への下痢止め作用もあるといわれている。


カタクリのデンプンを、砂糖やはちみつで甘くして、熱湯を注いでかき混ぜると半透明にやわらかく固まり、これを体力の弱った老人や幼児の腹痛に食べさせると、下痢止めに役立つとされる。


しかし、一般に市販されているジャガイモなどの片栗粉では、カタクリのように薬用にはならない。


ーだからかあ。


あの時、じいちゃんは、こっちのカタクリだと思ってたんだ。


だから、成分表をみてビックリしたんだろう。


山菜とかで、天ぷらとしても食べられていたけど、いまでは、あまり自生してないみたいだ。


けど、たぶん、じいちゃんの子供の頃には、あったんだろうな。


日本が原産って、なっていて、ほとんど日本全国にあった、


ー下痢止め。


生薬かあ。


ーほら、春馬。宝石探しだぞ?


笑ってたじいちゃんは、俺の記憶にある。


ラッシーと掘った穴と、くるくるまわるネズミ花火。


そういえば、あれも、


ー薬だよなあ。


火薬。


火の薬。


薬は、たくさん、毒もあるけど、きちんと使えば、人間を楽にしてくれる。


けど、


ー良薬口に苦し。


って言うけど、さ?


なあ?じいちゃん?


ーあのきな粉をまぶした片栗粉は、


すごく美味しかったんだ。


優しい記憶として、俺に残ったよ?

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