【22・シュギョウ】
「リューリ、こっちであってるのかい?」
現在、私はリューリを背に乗せて軽やかに草原を走り例の依頼を遂行する為目的地を目指していた。
「うん。 普通は街道があるからそれを通ってあの山を迂回するらしいんだ。 ブラックサーペントが見つかったのが、あの山の麓で良かったって言ってたよ」
今回は速度をかなり抑えて走っているので、リューリも普通に会話が出来るようで良かった。
ブラックサーペント狩りに街を出た私達は、街道を横切り一直線に山の麓を目指していた。街を出た直後にこれをしたせいか文句を言ってきたが、どうやら諦めたみたい。
「お! 森が見えてきた! アリア、森に入る前に昼食にしよう?」
片手に広げていた地図を仕舞うと、リューリがそう言ってきたし、予定通りに進んできたので、私はそれに同意して、森の手前で止まりリューリを降ろした。
「走っていただけなのにお腹すいたねぇ。 何を食べさせてくれるんだい?」
「食パンにナポリタンを挟んだ物だよ! 食べられる?」
「へぇー。 ナポリタンを作ったんだねぇ。 まぁ、小麦粉があるんだからなんとか作れるか。 私はフェアリアルキャットだよ? 問題ないさね。 ただ、それだけじゃ、足りないから肉も欲しいねぇ」
「んー……。 唐揚げでいい?」
「構わないさ」
昼食を取るため、アイテムボックスをゴソゴソしながらリューリがそう聞いてくるので、早く食べたい気持ちを抑えそう応えた。
必要ないとは思うけど、念の為に結界を張るとリューリが昼食の準備が出来たようで、ブランケットを敷いて目の前に出されたのは出来たてホヤホヤのナポリタンサンドにからあげ。
さすが、マジックボックス。 時間停止が機能しているので、温かいまま。 羨ましい。
「いただきまーす!」
「……いただきます」
リューリにつられて前世での食事の挨拶をしていざ、ナポリタンサンドに私はかぶりついた。
「「うっまー!」」
「この感じだよ!食パンといったら!」
「懐かしいねぇ。 大人になってからはほとんど食べてなかったけど、いいもんだねぇ」
「そうなんだぁ。 ご飯派?」
「朝はバタバタしてるから食パンをトーストして食べてたし、サンドイッチはレタスサンドかカツサンドがほとんどだったねぇ。 コンビニのだったけど」
「あー……。 コンビニかぁー……。 パン屋としては悲しいな」
いい天気に心地よい風。まるで、ピクニックのようでのんびりしたくなる。 二人でそんな前世での会話を気兼ねなく話しているが、目的の一つを忘れちゃいけない。
「リューリ、食べたら魔力コントロールについて練習するよ」
「げっ……。マジか……」
からあげを食べ終わり、残りのナポリタンサンドを食べ終えて満腹になった私は魔法で水を出して口元を洗うとリューリにそう言った。
「でもさ、僕は魔法使えてるよ? それに、転生とはいえ前世は魔法なんて無かったのに、よくアリアはそういう細かな事が出来るね」
不思議そうに言ってくるリューリの話は確かに頷ける。 だけどね?
「確かに私は転生であっちの世界には魔法なんてアニメやゲームの中の話さ。 けど、私にはフェアリアルキャットとしての記憶があるんだ。 だから、魔力コントロールについても使い方にしてもわかるんだよ」
それに、前世ではアニメやマンガを見たりゲームもしてたから、何となくどうすればいいかも分かったりしてる。オタクの知識を活用さ。
つまり、主人公が強くなる為に修行するやつで使えそうな物をリューリにさせるって事。
「僕もマンガとか見てたけど、それとどう関係あるの?」
「ふん。 考えるより身体で覚えな。 とりあえず、魔力を身体の隅々まで流してそれを維持。 そして、魔力を身体に纏わせられれば、身体能力も上がるはずさね」
「魔力を維持。 うーん……」
リューリとそんな会話をしながら食事を終えると、私が話した通り魔力を放出しだした。 魔法として魔力を使うのではなく、身体の隅々まで流す。
言うのは簡単だが、これは案外、魔術師レベルが高い者でも常時、その状態を維持し続けるのは難しい。
なんせ、その分魔力を常に放出しなくてはならないし、魔法として使う分も別に取っておきたい。 魔力が少なければ、増やす為の修行にはなるが、かなり危険になる。
なぜ、リューリにそれをやらせるか。 それはリューリの埋蔵魔力の多さが関係してくる。 まぁ、今はそんな事微塵も感じさせないけどね。
「うー……。かなり疲れるー……」
そりゃ、そうだ。 フェアリアルキャットも最初は戸惑い苦労したみたいだったんだから。
「それが、出来れば魔法の威力だって多少変わるさ。 ほら、魔力の流れを止めるんじゃないよ」
リューリの魔力の流れが止まると、私はすかさず魔力を巡らせるよう言ったのだった。
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