【13・イライ】


 様々な依頼が貼られた掲示板を見上げるリューリ。ランクも色々な物があるが、さすがはファンタジーな世界。魔物の素材から鉱石発掘。討伐に護衛。と実にどれも興味があるけど、リューリのランクとヘレンちゃんが一緒という事で出来る依頼は限られてくる。


 くそぅ……。さっさとリューリのランクを上げて色々な依頼を網羅してやる!っと小さく拳ならぬ猫の手を握り締めた。


 そんな中、リューリが選んだ依頼は薬草採取とゴブリン討伐5匹依頼。どちらもランクはDだ。



「この2つなら僕らでも大丈夫だね」


「お兄ちゃん、早く行こっ?私、お兄ちゃんより先にゴブリン倒すんだから!」



 やる気満々なヘレンちゃん。少し不安になりリューリを見上げると私の視線に気付いたのか、リューリは苦笑いをした。



「大丈夫だよ。ヘレンはああ見えて強いから」


「ならいいが、アンタはどうなんだい?」


「僕だって、父さん達に鍛えられているから大丈夫だよ」


「そうかねぇ?昨日はヘロヘロだったじゃないか」


「あれは、酔っただけ。アリアが悪いんだよ」



 そんな会話をしながらまずは薬草採取を完了させようと、ギルドを出て私は元のサイズに戻った。


 そして、二人が乗り易いように伏せをして二人が乗ると、今度はリューリの要望でゆっくり歩きだしたのだった。


 街から出てやってきたのは、一面原っぱの草原。風が気持ちよく吹き抜ける。元の世界では味わえない感覚にやはり、ここは異世界だと実感する。



「ふあぁぁ!高ーい!」


「アリアのこの高さに慣れてはきたけど、街中は恥ずかしかった……」



 フランちゃんはご機嫌に私の背の上で鼻歌交じりにキョロキョロ。


 リューリは疲れたようなため息をして街中を歩いていた時の事を思い出していた。


 そんな対照的な二人に内心で笑っていると、軽く頭を叩かれた。



「なんだい?」


「この辺りで止まって。 ヘレン、薬草を探すよ?」


「はーい!」



 元気よく返事をするヘレンちゃん。


 そして、二人が降りやすいようにと伏せをしようとしたが、ヘレンちゃんによって止められた。



「何のつもりだい?」


「えっとね、こうするの!」



 そういうとヘレンちゃんはバッと私を足場にすると跳び上がり空中で一回転すると華麗に着地して立ち上がった。


「ぉお!なんて、軽い身のこなしだい!?10点満点!!」


「やったー!」


「なにやってんの。アリア、褒めるんじゃなくて止めてよ。ヘレンはそんな事して怪我したらどうするのさ。まったく……」


「少しぐらいいいでしょ?お兄ちゃん!」


「そうさね。それに怪我しても私が治してやるさ」


「そういう問題じゃない!」



 ぶーぶーっと文句をいう私とヘレンちゃんにリューリは怒ると、気を取り直すように草原を見回した。



「もう、そんなに怒るんじゃないよ。ちょっとしたお遊びじゃないか」


「遊びで怪我してたら大変だよ。まぁいいや。とりあえず、ラート草は根っこからで3株。エルモ草は10本。こっちは根っこは要らないって依頼やるよ」


「わかった!なら、簡単ね!」



 街外れに広がる草原に響くリューリとフランちゃんの声をBGMに私はあくびをして寝そべった。



「あ!ラート草、発見!」



 少し離れた場所でヘレンちゃんの声を聞きつつ、耳を動かし常に警戒しながら私はリューリに問いかけた。



「ステータスは見れたのかい?」


「あ……やってない」


「はぁー……だろうと思った。なら、今のうちに見ちまいなよ」


「うん、《ステータスオープン》…………ぉお!出来た!すげぇ!ん?固有スキル『鑑定』?何これ?」



 よかった。無事に出来たみたい。それにしても、『鑑定』スキルもあったか。あると便利だよね。


「鑑定があったかい。便利だけど、周りに言いふらさない事だね。商人や一部の界隈の人間からは嫌がられるからね。まぁ、それがあるなら採取とか便利で他人のステータスも見れるさ。偽物、本物の見極めも出来る」


「え?!そうなの?」



 さっそくとばかりに『鑑定』で見分けながらエルモ草を順調に採取していくリューリ。『鑑定』を鍛えていけば、効能とか宝箱の見分けとかまで出来るはずだから便利なスキル。


 でも、皆が皆使えないから下手に他人にバレないよう気をつけないといけないスキルでもある。



「………あっさり終わった。これ、便利だね」


「お兄ちゃん、こっちも出来た!」



 ラート草を3株持って帰ってきたヘレンちゃんのを見分けると大丈夫、合ってるよと言って自身のアイテムボックスにエルモ草と一緒に仕舞うと立ち上がり、ここから目視で見える森林を指さし次はあっちでゴブリン討伐だ。と私らに言った。



「それじゃ、2人とも乗りな」


「はーい!」



 元気よく返事をするヘレンちゃん。可愛い!




 ヘレンちゃんの可愛いさにリューリと二人でほっこりしつつ、次の依頼であるゴブリン討伐へと軽く走っていったのだった。



 あ、ちなみにリューリのステータスはこんな感じだったよ?


【名前】リューリ・ライヘン


【種族】人間


【性別】男


【年齢】13


【レベル】11


【攻撃力】418


【守備力】530


【魔力】605


【スキル】鑑定、水魔法、火魔法、アイテムボックス


【従魔】フェアリアルキャット(アリア)


【備考】転生者。ライヘン家の長男。



 年齢に対して少しレベルが低いが魔力は中々の物。魔術師タイプっぽいね。

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