【6・キタク】

「雨は上がったようだねぇ」



 未だに納得いかないようなリューリをまるっと無視すると、先程まで聞こえていた雨音が止まったので、様子を見に私は洞窟を出ると身体を伸ばした。



「ぉお!ならば、早速帰って皆に知らせんとなぁ!」



 私の後に続いてゼルバさんが洞窟から出てくる。



「おじいちゃん! 一緒にちゃんとこの状況を説明してよねっ?」


「わ、わかっておるわい。お主は冒険者ギルドで従魔登録忘れるんじゃないぞ?」



 ……ゼルバさん、リューリに説明を丸投げしようとしたな?全く、誰だろうね!こんな面倒な状況にしたのは!



「仕方ない。 夜も遅いから私に乗りな。さっさと行くよ?」



 ガヤガヤとする2人にそう声を掛けると、ゼルバさんより大きい身体を伏せて乗りやすくした。



「ぉお! 長生きはするもんじゃなぁ。まさか、あのフェアリアルキャット様に乗る事が出来るとは……」



「あぁー……父さん達に説明するの大変だよー……」



 対象的な2人に内心笑っては、《魔素の森》を駆け抜けた。勿論、背に乗せた二人を落とさないようにスピードは抑えてだよ?



 ♢♢♢♢♢




 一方此方は《魔素の森》ライヘン領側の出入口。冒険者や領兵が集まり、今にも森へと入ろうとしていた。



「皆、すまない! 父ゼルバと息子のリューリの探索の為とはいえ迷惑をかける!」



 領主のリカルド・ライヘンが集まった者達に声をかけた。


 そう、ゼルバとリューリの考えていた通り、帰りの遅い2人を心配して捜索部隊が編成されていたのだった。


 すると、そこへ森の奥から途切れ途切れに聞こえる笑い声と悲鳴。それが、此方に近付いてきた。



「総員!厳戒体制!」



 リカルドが鋭い声で言い放ちながら自身も剣を抜き、部隊の先頭に立ち音の発生源へと警戒を強めた。



「ぎゃーーー!!もう出るから!!もっとスピード落としてーー!!」


「がはははっ!!馬よりも乗り心地良いのぉ!」



 しかし、森を抜けて出てきた者達の姿にそれぞれの武器を構えたが、そのまま見事に固まった。


 なんせ、あの伝説級の魔獣フェアリアルキャットにその背には、今から捜索しようとしていたゼルバとリューリが乗っていたのだ。


 これには、その場に居た全員が驚き固まるのは致し方ない。だが、いち早く正気に戻ったのは、領主であり二人の親族のリカルドだった。



「父さんっ!! リューリっ!!」


「ぉおっ! リカルド、今、帰ったぞー!」


「うぷっ……もう、ヤダ……止まってよ……」



 感動の家族の再会。普通なら喜ぶべきだが、そうはいかない。



「ちょいと、ゼルバ! さっさとリューリを降ろしな! 私の毛並みが汚れちまうよ!」


「ん?おっと、こりゃいかん!リカルドよリューリを受け取れ」



 止まったアリアから、今にも顔色が悪く吐きそうなリューリを慌てて、リカルドへとゼルバは渡すと、軽やかに地面へと飛び降りた。



「………あれって……」


「………本物……か?」


「一体何がなんだか……」



 集まっていた部隊の者達は状況についていけず、呆然と3人と1匹の様子を見守ったのだった。

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