第8話真実を含めた大嘘

「俺を利用してたんですね?」  


そう言うと2人は顔を見合わせた。



「違うよ、佐野さん。利用だなんて誤解。」

中島さんが、手を横に振って言う。



「そうだよ。レイナから、色々情報聞いてただけだから。」

綾瀬さんが、頷いて言う。



「本当に? 写真俺に渡したの、復讐の為って聞こえたけど。」



「ああ、レイナがあゆみから、学校追い出すみたいなこと言ってたから、その復讐って意味。」



「…姉の復讐って聞こえましたが?」


「それは私の個人的な事なの。私は西条さん可哀想だから、あんまりしたくないって話だから。」

中島さんが俯いて言う。


「そうゆうこと。大体、佐野が浮気現場見つけるって言ってたじゃん。それ協力したのに、利用って人聞き悪すぎ。」

むっとした表情をして、綾瀬さんが言う。



「その浮気現場分かったから、西条さんに伝えて欲しいの。」

中島さんが言った。



「なんで、浮気現場とか分かるような情報知ってるんですか?」

俺は、疑念を抱いて聞いた。


「それは浮気相手が…だから。

だから、天罰与えなきゃでしょ?」

綾瀬さんが耳元で囁いた。



「マジですか! 分かりました。

それは、西条に教える気持ちが分かります。」

俺は中島さんを見て、同情する様に言った。



でもな…会話の内容言わないけど、西条に復讐ってことは、良いことしようって訳じゃないよな。


男佐野、友情を優先します。2人には気をつけろって忠告ぐらいはしないとな。


だが、西条にすぐ言ったら、俺が言ったってバレるから時間置いて言うか。俺って賢い男だな。





それから数日後

西条の視点


佐野に言われた通りの東京タワーの隅に行った。


人々の囁きと、都会の喧騒が聞こえた。周りは、観光客やカップルでごった返していた。


晴れ渡る空の太陽が眩しく輝き、タワーの金属部分が光を反射していた。


観光客の笑い声が耳に届く。それでも僕の心は重く沈んでいた。




ここで待ち合わせしていると、タレコミが入ったと、佐野が言っていた。



なんだかな…綾瀬さんに良い様に操られてる気もするな。彼女と決めつける証拠は何もないけど、1番怪しいのは、彼女だ。



彼女の無実を信じていた僕は、嘘の情報だったよと、佐野に突きつけてやりたい一心でここに来た。


嘘の情報だと証明し、ここに来た自分と、佐野を責めたかった。


…しばらく10分ほど待つと、あゆみが来た。僕は、変装しているが、見ればすぐ気が付かれるだろうな。


怪しまれずに自然に、様子を探る。



はぁ…何やってるんだろ。浮気なんて、あゆみがするはず…男が来た。


あゆみが笑顔で相手を迎えていた。

そして…手を首に回して、キスをした。


嘘だろ…ああ…視界がぼやかけた。目から涙が出ていた。悲しみのあまり、目頭を抑えた。


相手の男を…確認しないと。後ろ姿で見えなかった。


男が横を向くのを待った。なにやってんだよ、あゆみ。



僕はため息吐いて、気分を紛らわそうとしたが、呼吸が上手く出来ずに、気持ち悪くなって、吐きそうになった。



好きだったんだ、あゆみの事が。僕は彼女にこれから別れを告げに彼女達に向かった。


しかし…僕は、浮気相手の顔を見た…そこにいたのは、写真の男ではなかった。


驚きのあまり、僕はその場にしばらく立ち尽くしてしまった。


どう言う事だ!? あゆみは一体何を考えているのだろう。


その浮気相手には、一度会ったことがある。

そう…中島さんの彼氏…大川律だった。



僕の心は混乱と疑問で満たされた。しかし、真実を知るためには、彼らのもとへ行かなければならない。







数日前

あゆみの視点


学校の屋上で、私は、考え込んでいた。

風が心地良い気分にさせる。もし風が吹いてなければ、気分は、落ち込んでいただろう。



あー困ったわね。あの桜井って男しつこい。


カフェで話し合いしようって、断りたいけど、断ったら、抱きついた事、言いふら少しような事言われるとは。



私を脅迫するなんて、本当クソ野郎ね。

桜に文句言ってやんなきゃ。



話し合いしても無駄だった。仲良くやっていきたいだなんて。興味ないのよ私は、あんたなんて。



電話するか、桜に。


「ねぇ、桜井って男しつこいんだけど。」

私は、愚痴った。



「そうなんだ…でもそれって、あゆみが、抱きついたからさ、気があるって勘違いさせたんでしょ? あゆみも悪いよ。」

桜に、諭す様に言われた。



「…だって精神的に不安定なんだもん。彼氏と仲が大変で。」

涙ぐんで私は言った。



「そうなんだ、別れそうってこと?」

桜が明け透けに言った。



「別れないよ。けどなんか、自然消滅しそうで…前に死ぬって言って別れずに済んだんだけど。そのことがあって、次は自然消滅狙ってるのかなって。」

私は不安いっぱいの気持ちで言った。



「そう言えば…あゆみには、隠しておきたかったけど、それなら言うね。実は、あゆみの彼氏から、レイナに恋するような視線で見られたって。」

桜の発言に私は、怒りを覚えた。



「はぁ? 中島に…それ本当なの?」


でも中島情報からか。中島が嘘ついてる可能性もあるか。


「本当だよ。レイナからだけじゃなくて、その彼氏からも聞いたから間違いない。レイナの彼氏が、熱い視線を送られて、腹が立ったって言ってたし。」


桜の言葉に、私は冷静さを失った。怒りに身を任せて反応する。

  


「だからか! 私最近エッチ拒否されるんだよね。ふざけてるよね?」

私は桜に同意を求めるように聞いた。

手に持つスマホが怒りで揺れる。


「そうなの? 完全にレイナに夢中じゃん。あゆみ可哀想。」

同情する様に桜は言った。


「私捨てられるのかな?」

弱気になって言った。


「大丈夫だよ。あゆみなら、捨てられないから。捨てたら、彼氏後悔するはず。そうなったら慰めてあげるから、あゆみは1番の親友だから。私は、大好きだよ。」

桜が優しく言った。



「なによ? 今日やけに優しいじゃん? 泣くよ。」

言いながら、私はもう涙が溢れていた。



「えー私いつも優しいじゃん。」

桜が戯けて言った。


「フン、調子に乗らないでよ! あんたの優しさなんて、西条に比べたら、ゴミみたいなんもよ!」

私は怒鳴って言った。



「え? なに? 急に怒って意味が分からないんだけど?」

桜が戸惑って言った。



「あんたが調子に乗るからよ。私が弱ってるからって、優しくしたら言いなりにでもなると思った? 私が上であんたは下だから、忘れないで。」

桜を注意して言った。



「ごめん、そう言うつもりじゃなかったんだけど。」

桜が謝って言う。



「どうだか。それより、桜井圭佑よ。そいつウザイんだけど、どうすればいいのよ?」

私は本題に戻した。



「ああ、桜井先輩の友達の大川先輩なら、なんとかしてくれるよ。大川先輩に相談してみて。」

桜が提案した。


「大川って、中島の彼氏じゃん。そいつに相談すればいいの? あんたじゃ駄目なの?」

私は面倒くさがって言った。



「うん、ちょっと言いづらい。被害者のあゆみなら、きちんと説明出来るでしょ?」

桜が言った。


「…分かった。じゃあそいつと相談するか。んじゃまた。」

私は桜に言い、電話を切った。

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