第4話 登校デート

「ん、もう朝か…………」


つばめは、小鳥のさえずりとともに目を覚ます。


「!」


いまにも顔と顔がぶつかりそうな位置にゆりがいた。

ゆりの呼吸がつばめに伝わる。

すなわち同じ布団で寝ているということ。

そのことを自覚した瞬間つばめは鼓動が速くなるのを感じる。


「わぁ! ゆ、ゆ、ゆ、ゆりー!」

(ゆ、ゆりがこんなに近くにいるー!)

(ていうか寝顔可愛い…………)

「ん……つばめちゃん起きたんだ! おはよう!」


超元気なゆりの”おはよう”に、朝から元気を貰ったつばめであった。


・ ・ ・


ゆりが言う。


「んじゃ学校行こっか……」

「ん、そだね」


玄関を出て歩き出す2人。

おっと! 目の前に手を繋いだカップルがいる。

今だ! チャンスだぞ!


「ねぇ、つばめちゃん?」

「んー?」

「手、繋ご?」

(ぐわー! 笑顔可愛すぎるだろー! 助かります!)

「つ、繋ぐ……」

(キャーーーーーー! また手繋いじゃった~!)


こうして救われるオタク(本人は認めないが)なつばめだった。


・ ・ ・


1年A組。教室に入る2人。集まる視線。


(あっ、まだ手繋いだままじゃん! やっば!)

「ゆ、ゆ、ゆ、ゆりー!」

「どうしたのつばめちゃん?」

「ど、ど、どうしたのじゃなくて……手、手ー!」

「手が何〜?」

「つ、つ、繋いだまま……」

「ん? いいじゃん?」

(いや良くないでしょー!)


凍りつく教室。背筋も凍るような朝だった。

春なのにね?



そこからは特に何も無く2日が過ぎた日。

2時間目体育。バスケットボール。


(ゆり可愛いなぁぁ!)


つばめの隣を駆け抜ける。ふわっと甘い香りが漂う。頬が熱を帯びるのを感じる。

本気でバスケをするゆりも超絶可愛い。

休憩中、深く呼吸をするゆりも超絶可愛い。

とにかく超絶可愛い。


「やっばい……ゆりのことめっちゃ好きだわ」

「え?」

「つばめ、今なんて?」

(やっべ!)


無意識に考えていたことをつぶやいていた。

しかもそれを友達に聞かれてしまった。

おっと! 忘れちゃいけないよ! つばめはゆりにはデレデレだけど、一応周りから見たらクール美少女なんだからね!


「あっ、いや、あ、その………………」

(あっ、だめだ、なんかボーッとしてきたかも)


パタン……


体育館に大きな音が響く。

すぐさまゆりがつばめの元へかけていく。


「つばめ、大丈夫!? 今保健室連れていくからね!」


後に分かったことだが、つばめは熱中症になっていたようだ。

体育が1番のきっかけだがおそらく、ゆりを見ていたこととつぶやきを聞かれたことで体温が上がっていたのもあるだろう。


「あぁ……天井……また保健室…………じゃないな、この感じ……どこだ…………?」

「つばめちゃん! 起きたー!」

「わぁ! ゆり!」

(ぐっ……まただ……やわら……やわらか……くぅ…………)


つばめは、ベッドに飛び乗って抱きしめてきたゆりに問う。


「私、どれくらい寝てた?」

「丸1日だよ!」


かなりの重症だったようだ。


「って、ゆり! 学校は!?」

「心配だもん! 休んだ!」

(うっ……なんて優しいんだ……天使……)

「ありがとね! てんっ……ゆり!」

「うん!」


危うく天使と言いかけたつばめだった。

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