悪役好き、異世界にて悪役ムーブをかます!

ひょっとこ仮面

悪役の目覚め

第1話悪役になりたぁああい!


「俺様は!ん〜、違う、吾輩は!いや、これも違うな〜」


俺の名前は朝貝栄一、ピッチピチの18歳で、趣味は裁縫と読書、ゲームである。


最近はライトノベルにハマっており、一人でブツブツ本を読んでいたらクラスのみんなから根暗中二病という不名誉なあだ名をつけられてしまった。 


まったく、酷いよね!プンプン!


「おい、あいつもう帰る時間なのに....。」

「もうほっとけって」


そして今は、俺が異世界に行ったら何をするかを事細かくメモっている。

いやぁ、やっぱり異世界と言ったらロマンですよ、ロ・マ・ン!

ちなみに皆はどんなキャラクターが推し?


俺の推しは悪役だ。

圧倒的な力セリフをもちいて敵味方関係なく畏怖を与える存在.....。

これに憧れなくて何に憧れるのか!


ついさっきも悪役としての一人称を考えていたところだったのだ。


俺は異世界に転生したら絶対に悪役ムーブをかますぞ。

黒いロングコートに黒い中折れ帽をつけて、素顔を隠すのさ!ウヘヘ!


「ん〜、夢が広がりング」


「おい朝貝、もう皆帰ったぞ」


俺が妄想を捗らせているとクラスの担任から声がかけられた。


あれっ、早くね。だってさっきまで五時限目...ってもう6時かっ!?

妄想している間に2時間も立つとは恐ろしき集中力、俺でなきゃ見逃しちゃうね。


って、ま、まずい、こうしちゃいられねえ!


「先生っ!ありがとうございます!」

「おっ、おう」


俺の鬼気迫った様子を見て先生がドン引きしているがそんなの関係ねぇ!


6時半から俺の大好きな『魔女マジ・マジカル!』の最終回、恐らくジャマジャイロ魔公爵と魔法少女達の決戦が放送されるのだ!これは見逃せない!


「うおおおおおおおおおおお!!!」


急いで下駄箱の靴を取り、家までの道をダッシュで走る。

少し外は肌寒いが、きれいな空だ。

きれいな空に美しい夕日、そして視界に入るきれいな鉄骨、幻想的だなぁ。


ん?鉄骨?


「おいッ!君っ危ない!!」


視界いっぱいに広がる鉄骨


えっ俺は死ぬのか?まだ異世界することノートを半分も書いていないのに?

まだ、『魔女マジ・マジカル!』の最終回も見ていないのに?


「嘘だろ!?!?!?」


脳裏に走馬灯が駆け巡る。


ああ、そういえばこの間見た異世界アニメ、転生モノだったなぁ。

神様からチート能力をもらって世界を救ったんだったっけ?カッコよかったなぁ...。


もし、


もしもだよ?俺に来世があってチート能力を貰えて異世界にいけるのなら.....。


俺は......


俺は!!


絶大な力を使い、世界に恐怖を与え、主人公を待ち受けるような、そんな.......




「悪役になりたあああああい!ヘブっ!?」


この言葉を残し俺は死んだ。




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