第10話 ストーカー

「2人とも、バイト受かったぞ!!」


アンタレスがアントニオとロッシュに向けて、声高らかに叫んだ。



しかし、2人とももう寝ている。

それもそのはず、もうすっかり夜中だ。

テーブルには、スープが置いてあった。


「なんだ……まぁそりゃ寝てるか。

平日だし尚更」



彼女はスープを食べながら、パソコンを開く。

早速仕事をするつもりだ。

パソコンで仕事するとか何年振りだろうか。


まぁ年齢にもよるか。















はい。


「(お、これかな)」


データ入力の仕事を、スプーンでスープを口に運びながら行うのは、なんだか仕事人らしい。

時計の針を見ながらだと、もっとそれらしい。



「(まぁ、こんくらいなら問題無いな。

そろそろ寝なきゃだし、やめるか)」


パソコンを閉じて、洗面所に向かい、歯を磨き始める。

星の怪物から一気に、社畜の怪物へと変貌した彼女は、誇らしげに思っていた。



「(OLみたいで かっこいい)」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




朝になった。


昨日遅くまで、パソコンの画面を見ていたからなのか、いつもよりも遅く起きてしまった。


ロッシュが料理しながらアンタレスに挨拶する。



「おはようございます」

↑ロッシュ


「ん、おはよう。そうだ、バイト受かったよ」

↑アンタレス


「あぁ、それはパソコンが片付けられてなかった事から察せました。

おめでとうございます」


「ありがと」


「やっと社会に貢献するようになったか」

↑アントニオ


「うるさいなぁ」



いつも通りの会話をしながら朝ご飯を食べ、服をパジャマから着替えて、アントニオを見送る。


朝の喧騒が過ぎると、ロッシュは家事…アンタレスはバイト。



「よし、今はこの辺で。ロッシュ、手伝うぞ」


「アンタレスさんはトイレ掃除しておいてください」

「おっけー」





アンタレスはトイレに入ると、シートで便座を拭いた。


今までトイレは魔法で消していたため、トイレ掃除というよりも、トイレに入る事自体 久しぶりだ。


「(シャウラ生活は当分無さそうだな)」



拭き終わったら、今度は洗浄剤などを便器の中に入れて、掃除する。

その後は床拭きだ。トイレは 埃が少ない印象だが、綺麗ではない。



「(こうしてみると、私は掃除とは無縁の生活をしてきたんだなぁ。

血で汚れた服は捨てるか、最低限洗っていただけだし。

掃除してると気分が落ち着く。良いなぁ。

もしやこれが人間の本来の喜びなのかもしれない。

あぁ、掃除は喜びの母だぁ…)」











「アンタレスさん、トイレ掃除終わりました?」


ロッシュが2階へ洗濯を干しに行くついでに、トイレを覗いてみた。


そして、若干吐き気がした。







「うわぁぁん、お袋〜〜」


なんと目の前で、アンタレスが便器にしがみついている。


ロッシュは悟った。






「(トイレ掃除もさせちゃダメだ!)

ひ、昼ご飯の支度しますよ…?」



「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァん、掃除ちゅき〜〜」


「(あもう、ダメだこりゃ)」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






アントニオは通学用のバスで学校から帰っている。


最近、誰かにストーカーされている気がするのだ。


誰がアントニオのストーカーをして得するのか知りたいが、彼にとっては気分が良くない。


なので、バスを使って、必死にその事を忘れようとしていた。

バスの中だとさすがに、つけられている気配はしない。


「(あの弟子を○して以降、俺のストーカーがいる気がするんだが、なんなんだよッ)」


バスの中で癇癪を起こすわけにもいかないので、頑張って我慢しているが、ストレスは治らない。





そしてとうとう、家から1番近いバス停に到着してしまった。

アントニオは周りを警戒しながら降車する。



「(あーもう、学校の帰りくらい、のんびりさせてくれ)」






その様子を、影から見ている者がいた。

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