第7話 魔力の行方

クルミが来てからは毎日が楽しかった。


言葉は喋れないが「キュイキュイ」と伝えてくる言葉が可愛らしく、クルミの嬉しそうな気持ちが伝わってくる。


しかし、一番可愛がっているのは母親のセイラである。


最近では餌付けと言うなの囲い込みで一緒にいる時間が多いほどだ。


「クルミちゃん、一緒にお買い物にいこうね~」と言って連れていくこともしばしば。


まあ、何かあっても召喚陣に入ってこっちに戻ってこれるから安心だ。


そうそう、一度きりの召喚のスキルは使うと無くなったのだが、嬉しい得点があった。それは召喚陣の中に物が入るということだ。


クルミ専用の召喚陣になっていることから、クルミの家みたいな扱いになっている。

広さは日本で例えるならプレハブ2個分くらいの広さだ。


1個分の広さをクルミの部屋として残りの一個分の広さに物を置く許可をいただいた。


ちなみにクルミに簡易鑑定を使うと以外なことが判った。


【名前】クルミ

【種族】月兎

【性別】メス


【スキル・固有スキル】

月の加護・???・???


リスの様な容姿なのに種族は月兎だそうだ。さらにはスキルに関して判明できない物が二つある。


戦闘では役に立たないがクルミは癒しをくれるのでリアム的には嬉しい相方である。


そして、クルミのおかげで解ったことがある。


リアムとクルミにはパスが繋がっているのだが、もう一つパスが繋がっているとクルミが伝えてきた。


パスが繋がっている場所に案内してもらったのだが…。


「えっ、ここ?」


「キュイ!」


「ここには何にもないんだが?」


クルミはパスが繋がっている場所に指を指した。


その場所には大きな桜の木があるだけ。


「えっ、もしかして桜の木とパスが繋がっているってこと?」


「キュイキュイ!」


さらにはとんでもないことを伝えてきた。


何でも桜の木からリアムの魔力を吸い取られているそうだ。


「えっ、もしかして俺が魔力操作出来ないのも魔力を吸われてほとんど無かったってこと?」


リアムがそんな言葉を発した後には何処からともなく声が聞こえた。


「テヘッ」


リアムは桜の木をジッと見つめる。


さらに見つめる。


……。


桜の木は観念した。


そして姿を現した。


頭の上に握り拳を当て可愛く「テヘッ」て発しながら。


リアムは口をポカーンと空け固まっている。


「えっ、何か言ってよ~~~」


「も、そしかして精霊?」


「そうよ」

精霊は「えっへん」と言いそうなほど胸を張っている。


「言葉が判るんだね?」


「そりゃ~そうよ。私の宿主なんだから」


「そう言うもんなんだ~。へぇー、、、えっ?」


「精霊の宿主なんだから当たり前でしょ?」


「いつ宿主になったの?」


「約2年前くらいじゃないかなぁ~?」


「そ、そっか。ちなみにどう云う経緯で?」


「リアムが話かけてくれる内に精霊としての自我が芽生えたそうだ。その後にリアムがずっと一緒にいれたら素敵なのにねって言ってくれた時に私頑張ったの!」


どやぁ~と言わんばかりに誇らしげである。


「あ、そ、そうなんだ。でも何で魔力を吸っていたの?」


「精霊として産まれたばかりだったから、宿主の魔力を吸って喋れるくらいになれる中級精霊になるためよ。」


「そ、そう。それで中級精霊になれたの?」


「うん、最近やっとね」


満面の笑みで伝えてくる精霊をリアムは怒る気が薄れていった。


そして、リアムは諦めて受け入れることにした。


「それで何の精霊なの?」


「桜の精霊よ」


………。


………。


………。


「桜の精霊だってば~。」


………。


………。


………。


「ちなみに桜の精霊って樹魔法にあたるの?」


「さぁ?」


精霊は可愛く首を傾げている。


リアムは現実逃避することにした。


「クルミおいで」


リアムはクルミを呼んでモフモフで癒されることを選んだ。


「よ~し、よし、クルミは可愛いな~」


クルミは尻尾をブンブン振って喜んでいる。


「キュ~~~~イ」


こうしてリアムは何故魔法を使えないか判った瞬間でもあった。

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