(3)
「ところで、どこ行くの?」
よりにもよって、馬に乗って走り出してから肝心の事を訊いてなかった事に気付いた。
「とりあえず、『熊おじさん』の本拠地が有る色町だ」
「場所知ってるの?」
「ともかく、ついて来い」
結構な速さで走ってるのに、馬に乗り慣れてないボクでも判るほどの揺れが少ない。
たしかに……草原の民や今の王族の先祖は、この小さな馬で、この国を征服したってのは本当かも知れない。
道では、怪我した兵隊さんの応急治療が行なわれている。
それを見た草原の民の女の子は馬を止め……。
「何だ、この傷は?」
良く見ると、兵隊さんの体には、いくつもの小さな穴。
鎧で覆われてる部分さえも貫かれている。
そこから血が流れているが……その血の中に混ってるのは……。
「毛?」
「おい、女子供がどこに行く気だ? 帰れ、危いぞ」
兵隊さんの応急治療をやってる医者らしい中年の男の人が、ボク達を怒鳴り付け……。
「誰の仕業だ?」
「知らん……ただ、銀色の狼男だと……」
「モングか……『江府』の……」
「ま……待って……たしか、そいつ……」
「『熊おじさん』の後継者候補の中で、一番強い奴だな。その狼男が居るのは、こっちで良いのか?」
「だから、危ないと言ってるだろ」
「おい、お前たち……まさか……」
ところが、続いて若い男の声が
「えっ……? あ〜、偽物の王子様ッ‼」
「人聞きの悪い事を言うな、私の国の法律では王族を騙った者は斬首だぞ。お前たち、私に何か怨みでも有るのかッ⁉」
そこには、隣国の王子様に仕立て上げられた、その王子様の従者が……十数人の騎士と、その倍ぐらいの歩兵を引き連れていた。
騎士達が着てる鎧は西方風、ほぼ全身を防御してるんで……多分、重くて馬に乗ってないとマトモに動けない。
歩兵達は、流石にそれよりは軽装で、全員が槍と……
「医師殿、この先に、その兵士達を負傷させた相手が居るのか?」
「そうですけど……」
「よし、その者達の
「いや……あの……」
「ところで、そのこ2人、女子供なのに、戦いに行くなど……何か策でも有るのか?」
「いやあ……もちろん……
「マヌケか、お前は……?」
草原の民の女の子は……ゲンナリした口調でそう言った。
「全員、
そして、偽物の王子様の声。
「えっ?」
「いい事を教えてくれた。さあ、その武器を渡してもらおうか?」
あ……本物よりはマシだけど……偽物の王子様も結構なクソ野郎だった。
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