第15話 早咲きのクローディア
「確かにそうなれば面白いと思いますけど、できるんですか?成績をつけるのは元騎士団長ですよね。」
因みにミスターデューというらしいが、嫌われていて誰も呼ばないそうだ。
「先輩方から聞いたんだけど剣術のテストって試合形式らしいの。しかもトーナメント。」
トーナメントって勝ち抜き?
「強くなって勝ち抜くつもりですか!?」
「できればね、だけどそんなに上手くいくとは私も思っていないの。」
「そうなんですか?」
てっきり自信があるのかと思った。
「私は一生徒に過ぎないもの。私の一番の目的はまともに教えてくれる先生を得ることよ。今のままでは叶わないみたいだから。」
「……決めるのはクライヴ先生ですから絶対とは言えないですけど、先輩がクライヴ先生と直接お話しになれば教えてもらえるかもしれません。」
磁器の人形みたいに綺麗で一見冷たそうにも見えるクライヴ先生だけど、そうではないとわたしは思っている。
それに校長先生が味方になってくれるかも。
「うん、そうね。やっぱり直接話さないとね。ありがとうマノン。明日学校で会いましょう。ごきげんよう。」
「ごきげんよう。」
クローディア先輩は軽やかな足取りで去っていった。
はぁ〜、綺麗な人だったなあ。
美醜に疎いわたしでも一目で美少女だって思ったもんね。
ん?
明日学校で会いましょう?
クライヴ先生にだよね。わたしじゃないよね。
一瞬勘違いしちゃった。
下宿に帰ってジェシカと勉強してる時にクローディア先輩の事を話してみた。
今日はクライヴ先生は忙しいらしいのでジェシカの部屋で勉強会だ。
「剣術授業がそこまで酷いだなんて知らなかったわ。」
「わたしも二年になるのがちょっと憂鬱になったよ。」
わたしの場合、進級できるのかまだわからないけど。
「それにしてもマノンってばすごい人とばかり知り合うのね。」
「え?」
「クローディア先輩ってあの方でしょう。『早咲きのクローディア』様。」
「早咲き?」
「一部の上級生、特に男子生徒からそう呼ばれているのよ。十三歳とは思えない大人びた美貌の持ち主だから。まあデリカシーに欠ける言い方だと思うけど。」
「確かに。」
男性に好かれる大人びた容姿なのを本人がどう思っているかはわからないよね。
嫌がっている可能性もある。
「でも女子にも人気あるのよ。美人だし気さくだし、そのうえお父様は王都一の豪商よ。わたしも会いたかったわ。クライヴ先生の次はクローディア様だなんて。」
五日前、病み上がりのわたしの負担を軽くするためにクライヴ先生が下宿に来て勉強を見てくれた。
わたしより後に帰ってきたジェシカ達は先生を見て驚いていたようだが、先生がついでだからと一緒に勉強を見てくれる事になると喜んでいた。
ここにはわたしとジェシカの他に二人の女の子が住んでいる。
美術学校二年のリジーと服飾学校三年のメアリーだ。
リジーは先生をスケッチさせて欲しいと頼んできた。最初は断った先生だったが
「画力向上の為にいろいろな人を描きたいんです。」
と言われると了承した。勉強熱心な子には優しいのかもしれない。
メアリーは先生を見てから創作意欲が止まらないと舞台衣装のデザイン画を何枚も描いていた。
リジーはスケッチを一枚くれたけど、先生には言わないほうがいい気がする。
「わたしなんてロドリゴ君やルカ君ともうまく話せないのに。」
「ロドリゴとルカ君?なんで?」
「二人とも美形じゃない。人気あるのよ。ロドリゴ君はちょっと怖いし、緊張して話せないわよ。」
……口の悪さばかり気になって、美形だとか思わなかったよ。そういえば整った顔だったな。
ルカ君はかわいい顔だと思ってたけど。
「ジェシカはクライヴ先生に剣術習ってみたいと思わない?」
「思わないわ。今は一年の勉強だけで精一杯よ。」
そうか、一緒にやりたかったけど仕方ないか。
……クローディア先輩、クライヴ先生に教えてもらえるといいな。
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