第9話 森の異変 猫の声
東に向かって歩き続け、気が付けばお日様は一番高い位置まで来ていた。
お昼ご飯を食べたいと訴えると、先生は南門前で買ったというサンドイッチとお茶をくれた。
わたしが持ってきていたお弁当より美味しそうだったのでありがたくいただいた。
景色を見ながら二人でランチを楽しむ。
今日は
卯の月の
来月の
「これから行く森は魔力溜まりができやすい所だ。
そこには簡易魔力計があるからこの地図に……」
先生は鞄から紙を取り出して渡してきた。
森の地図らしいが、あちこちにある丸はなんだろう?
「魔力計の色を書き込め。」
赤、青、黄の色鉛筆も渡された。
「簡易魔力計ってどんな物なんです?」
教科書には載っていなかったと思う。
「棒の先に魔力で色を変えるオーブがついた物だ。地面に刺して使う。
地図の丸が刺してある所だ。
魔力が多いと赤、少ないと緑になる。
材料は高価だが簡単に作れる。今年から魔術学校の生徒が実習で作ったものを秋の学都祭で売るそうだぞ。」
東門近くの森まで来ると先生は顔色を変えた。
「マノン、少しここで待てるか?
十分いや、五分で戻る。」
「え?いいですけど……」
「絶対に森には入るな。
私が戻るまで待っているんだぞ。」
そう言うと、あっと言う間に森の中へ走って行ってしまった。
急に一人にされると少し心細い。
でも、五分で戻るらしいし大丈夫だよね……
……そろそろ二十分経つけど、先生まだかな。
……みゃー
ん?今子猫の声が聞こえたような……
耳を澄ましてみる。
わたし、耳や目は良い方なんだよね。
他の人より小さい音も聞こえてるし遠くまで見えてるようだって父さんに言われたことがある。
……みゃー……みゃー
やっぱり聞こえる、捨て猫?
近くの村の人とかが捨てたの?それとも迷子になったのかも。
……みゃー
どこ?
森の中の方から聞こえる気がする。
音の方向を特定するためにさらに耳を澄ます。
先生が行った方向とは少しずれてる、三十度くらい?
実はわたし学都での暮らしに一つだけ不満がある。
それは猫がいないことだ。
学都でも猫を飼っている人はいるんだけど、家から出さない。完全室内飼いだ。
うちの下宿の大家のスザンヌさんは猫がお好きではないらしい。
それに下宿する生徒が数年毎に変わるのでどんな子がきても良いようにペットは置かないそう。
ルフ村では猫を飼っている家が多かった。
小麦や米を食べる鼠を捕まえる為だ。
わたしの家は留守がちだから飼ってはいなかったけど村長さんやアメリの家では飼っていた。
飼っていなくても彼らの家に行けば猫と触れ合えた。ときどきはうちの庭や畑に来た猫と戯れることもできた。
学都ではそれができない。久しぶりに猫の声を聞いて、どうしても見つけたくなってしまった。
……みゃー
子猫特有の甲高い声が聞こえる。
あのふわふわした手触りを思い出す。
撫でたくて堪らなくなった。
……みゃー……みゃー……みゃー……
気が付けば、わたしは森に足を踏み入れていた。
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