第19話 : 人としての特権を楽しむこと、それが創作

 私を含めて中高年(特にアラフィフ以上)の方は、周囲にそろそろ鬼籍に入る同級生がいたりすることでしょう。

 私の周りにもそう言う人物が数名いますし、同窓会をすれば大病を患った経験を持つ方が何人かいます。


 明日は我が身……身体に気をつけるのはもちろんですが、残された時間をどう使うかをそろそろ考える時期でもあります。


 全く話は飛びますが、高齢の方に「庭に果物を植えよう」と呼びかける人達がいます。

 後期高齢者の方はそう言われると「生きている内に食べられるかどうかわからないから嫌だ」と言う方が大半なのだそうです。


 こんな時の返し方は「この果物を食べるまで生きているのだ」と考えれば、生きる目標ができるということでした。


 本作を書きながら思い出したのはこの話でして、小説創作も全く同じではないかと思えたのです。



 私はどの様な内容の小説を書くかのアイディアについては、ワープロに数十作品位はアウトラインを書き溜めてあります。

 本業もありますから全てに手を付けるわけにはいきません。恐らく生きている間に全部は書けないでしょうし、今でもアイディアだけは湧いてきていますからアウトラインの総数は増え続けています。


 それでも「全部書いてやる」という思いだけは持っています。


 そう思うと、今まで健康診断で色々指摘されていたことに対して真摯に向き合う気持ちが湧いてきます。


 数話前に書いた自分が生み出したキャラクターの育児放棄をしないと言うこと……「この作品を書き終えるまでは生きてやる」ということです。



 もちろん、読み返してこれはダメだというボツネタもあります。

 現在書いている長編は最初は穏やか過ぎるストーリーで刺激が足りないと思っていたもので、最初はこれを書く気はありませんでした。


 ですが、他の作者様が投稿されている作品の描写が過激化し、エスカレートしてきている昨今、今までの自分を反省してほのぼの系を書いてみようと思い、筆を進め始めました。


 ネタバレになるので詳細は書きませんが、あまり目にしないアイディアを沢山盛り込んでオムニバス的に書き進めています。

 一例を挙げれば、人魚の下半身が魚の状態ままダンスを踊れるようにするかを一生懸命考えました。魔法で身体を浮遊させずに踊るとしたらどんな無理のない方法があるのか……


 バカバカしいことでも真剣に考えればアイディアは出てくるものです。

 まだボケてはいないなと再確認できた時はとても嬉しかった。


 中高年の方にとって小説を書くことは年齢への挑戦です。

 いずれ寿命が尽きることは必然だとしても、その時までボケずにキーボードを叩きながらアイディアを捻り出す。


 人間だけが許された想像の世界を最期まで楽しむ。


 そんな「人間らしさ」、「人間として生まれた特権」を楽しみませんか。




 中高年の方、


 「いつ書くの? 今でしょ!」です。

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