過保護なエレノア★フローリア帝国の執行者序列第2位、【白銀の剣聖】の異名を持つ剣姫の子育て奮闘譚

二宮まーや

第1話 黎明、エレノア・クリスティーネ

 


「エレノア様、準備は整いました」

「では、おやりなさい。ならず者達を根絶やしにするのです。容赦無く徹底的に殺しなさい」


 私の名は、エレノア・クリスティーネ。フローリア帝国の序列第2位【白銀の剣聖】の異名を持つ可愛い物とお菓子作りが大好きな女です。


「ははっ!」


 私達は現在クレア女王陛下の命令により、フローリア帝国の東部の森に潜む盗賊団を殲滅する為、精鋭部隊を引き連れてこの鬱蒼としたマリファルクの森へとやって来ました。


 総勢50名、しかも、私の精鋭達を引き連れた女性のみで構成された練度の高い部隊である。人数は少ないけど一人一人が腕の立つ強者ばかりです。盗賊ごときに遅れを取る要因は正に皆無と言えるでしょう。


「捕まっている女性と子供は救出して保護なさい! 蛮族共は全て根絶やし! 一切の慈悲を与えてはなりません! 盗賊を魔物だと思って斬り殺すのです!」


「「「「「イエス、エレノアお姉様!」」」」」


 私は本当に部下に恵まれているな.......内心ではそんなに頑張らなくても良いのだといつも言っているのだが、皆忠誠心が高すぎて困っている程です。こんな事を思うのは贅沢な悩みなのかもしれないけど。


 特に副官の青髪の美少女、ルーネ・クリスタは過保護過ぎて仕方がない。私も部隊長として前線へ出ようとするとが、ルーネに【部隊長は後方でどっしりと構えて下さい! エレノア様に危険が及ぶ可能性がほんの少しでもあるのなら看過できません!】と言われる始末。


「エレノア様、私達にお任せ下さいませ」

「貴方達のことは信頼しています。だけど、私も出るわよ。どんな敵が潜んでいるか分からないからね」

「わ、分かりました.......ではお供致します」


 しかし、ここはいつ来ても不気味な森よね。ここに来るのは初めてでは無いけど、何度来ても気分がどんよりとしちゃう。


「前方に2人、木の上にも1人居るわね」

「エレノア様、私にお任せ下さい!」

「ここは私がやるから、ルーネは見てなさい」


 エレノアは懐から太刀を静かに抜刀する。その刀身には凍てつく冷気が身に纏い、エレノアの目が赤く光る。




【⠀氷輪閃ひょうりんせん綾辻あやつじ⠀】




 エレノアが刀身を振り翳すと冷気を纏う飛ぶ斬撃により、隠れてる敵はなすすべも無く切り刻まれた。


「さ、流石エレノア様です!」

「はぁ.......」

「エレノア様? どうしましたか?」


 本当はそろそろ戦いから身を引きたい.......私も今年で22歳だ。何処か遠い田舎の地でのんびりとスローライフをしながら、大好きなお菓子を作りながらお店を開くのが今のささやかな夢です。


 私がこの国に仕えてる理由。国の為.......と言うより、私の仕えるクレア女王陛下に忠誠を誓ってるだけですけどね。スラムの掃き溜めと言われる様な場所で、孤児だった私を拾って育てて下さったのが、現在の帝国のクレア女王陛下だ。


 少し変わった御方だけど優しくて、民の事を第一に考えて下さる素晴らしい御方です。私の敬愛するこの世で最も美しく唯一無二の御方.......


「ルーネ、大丈夫。何でも無いから」


 私の事を育てて下さったクレア様の為に、私は全てを犠牲にここまで長い月費を費やして来たけど、気付けば国の要職にまで登り詰めて気軽に辞職したいと言える様な立場では無くなってしまったのです。内心では、もう戦う事や貴族や政界の派閥争い等に関わりたく無いし疲れたと言うのが本音かな。


「そうですか? なら良いのですが.......エレノア様にも悩みがあるのですね」

「同じ人間ですよ? 悩みの1つや100くらいあります」

「そ、そんなにですか!?」


 私の所属するフローリア帝国は、大陸でも1位や2位を争う大国です。クレア女王陛下を筆頭に序列第一位から序列第十位までで構成される【執行者フェンサー】と呼ばれる強者達がいる。


 私は序列第二位【白銀の剣聖】と言う異名を女王陛下から直接賜っている。この国に置いて序列は強さを示す指標で、順位が高ければ高い程に実力があって強いという事だ。この国の正規軍は、私を含め10人のフェンサーの部隊によって主に構成されています。女王陛下の近衛隊もちゃんとありますけど、あれはどちらかと言うと騎士団に近い様なものですね。


「あ、あの! 私はエレノア様の副官でもあるのです。だ、だから! 何かあれば相談に.......ごにょごにょ.......」

「あらあら♡」


 ルーネのもじもじとした上目遣いが可愛いしゅぎる♡ 何この子、え? お持ち帰りしても良いの? 青髪のフワフワなボブカットの髪を揺らしながら、私を誘惑して来るとは.......ルーネは本当にイケナイ子ですねぇ。


「ルーネの穿いているパンツは何色なのかな〜って考えてただけよ♪」

「ぱ、パンツ.......!? エレノア様.......お戯れを.......」


 あぁ、この子本当に性に関してはウブなのよね〜♡ もし今の立場が無ければ、即刻ベッドへお持ち帰りするのだけど残念。そんな事したら、私の清廉潔白なイメージが雪崩の様に崩れ去ってしまう。


「ルーネ、冗談だよ♪」

「エレノア様、発言にはお気を付け下さい。貴方はこの国の序列第2位の執行者なのです。立場を弁えて下さいませ」

「はいはい」

「はいの返事は1回です!」

「もう〜ルーネはお堅いんだからぁ〜」


 正直言うと国の中枢.......貴族や派閥とかが本当に面倒だ。私も実質ではこの国のお偉いさんと言う立場に居るけど、私の血筋.......スラム出身だと言うのを酷く毛嫌いする連中や私を疎む者も居るのもまた事実。


 執行者フェンサーと言う地位は正直言うと私には荷が重い。私は剣の才能には恵まれているけど、その他に関しては一般人と何ら変わりありません。そして、執行者にも派閥がそれぞれ10個に別れており、それぞれ互いに監視をしたり足の引っ張り合いばかりだ。


「ほほう〜」

「え、あの.......エレノア様.......そのいやらしい手付きは何ですか!?」


 自分で言うのは何ですが、私は容姿端麗で傾国の美女と周りから言われており、貴族のおじ様方や殿方.......そして、同性からの人気が根強く執行者の中でも派閥はかなり大きい部類です。俗に言う白銀派と言われる人達が多いのだ。


「エレノア様.......配下の者達の前では.......ちょっと!? エレノア様!?」

「ふむふむ、ルーネ.......おっぱいまた大きくなったかしら? 弾力もあって良さ味が深いわね♪ 私の胸のサイズもいつか抜かれそうね」

「は.......ハレンチです!」

「うふふ♡ ありがとう♪」

「いや褒めてませんから.......!?」


 本当にルーネはからかいがいのある子です♪ 青髪、ツンデレ、巨乳、ミニスカートにニーソックスと属性メガ盛りてんこ盛りですからね♪


「エレノア様、良いのですか? クレア女王陛下にエレノア様からセクハラを受けてますと訴えますよ?」

「うぐっ.......」


 やれやれ、今日の所はルーネを弄るのはこの辺にしておきましょうか。そろそろ盗賊の討伐も終えて他のメンバーも戻って来るだろうし。



 ―――そして、しばらくルーネを弄りながら待っているとエレノアの配下のシャロン達が戻って来た。



「エレノア様、ご報告致します! 盗賊団の連中は全員死亡、女58名、子供41名を救出に成功致しました。盗品のマジックアイテムや武具や財宝も全て押収して、現在捕虜達と共に帝都へ移送中です!」

「シャロン、報告ご苦労様です。では私達も撤収の準備をします」


 さて、帝都に戻ったら酒場で一杯やろ♪ 報告や書類業務は、全てルーネに丸投げして私は帰るぞ〜♪ 配下に仕事を与えるのも上司の務め。配下の成長を促す為にも私は基本的に仕事をいつも押し付け.......ごほん。やらせているのです♪


「エレノア様.......それともう1つご報告が.......」

「ん? シャロン、どうしたのです?」

「盗賊団のアジトにて、エルフと思われる小さな赤ん坊が.......」

「あらあら、それは大変ね。その赤ん坊はどうしたの?」

「外で待機してるアンジェとクロエが現在面倒を見ております」

「分かりました。では、ここに連れて来なさい。赤子の健康状態を確認します」

「了解です!」


 私は純粋なエルフではありませんが、人間とエルフの間に生まれたハーフエルフです。何故かエルフと聞くと謎に親近感が湧きますね。


「はぁ.......仕事だから面倒を見るだけですが、私は子供とか赤子はあんまり好きではありません」

「エレノア様、そんな事言いつつも顔が嬉しそうですよ?」

「ルーネ、それは気の所為よ」


 私に子供は不要。正直結婚せずにこのまま独身で良いかもしれない。最近では仕事を早く辞めて、田舎でスローライフ&お菓子作りに専念したい自分が居ます。


 しかし、今の私の立場を考えるとそれは夢のまた夢.......国の要職に付いてからと言うもの、良かったと思える事は、生活の質が上がったのと値段を気にせず好きな物を沢山購入出来るくらいですね。後は社会的地位、同性、異性からの憧れの眼差しや尊敬される事が増えたくらい。まあ、私にとって承認欲求何てどうでも良いのですけどね.......下らないものです。


「エレノア様って、実は幼い子とか好きですよね?」

「え、ルーネ.......その言い方だと私がやばいやつみたいじゃないの。べ、別にそんな事無いからね?」

「ふ〜ん」


 私にそんな変態趣味何て無いわよ。ルーネとは長い付き合いとは言え、最近私に言うようになって来たわね。 


「エレノア様、あんまり変な事はしないで下さいね。最近良からぬ噂が立っておりますよ?」

「大丈夫よ〜私はいつでも清廉潔白の聖女の様な存在ですよ♪」

「えぇ、それエレノア様が言うと説得力に欠け.......」

「ルーネ、貴方本当に言うようになったわよね♪」


 やっぱり配下の者にも定期的に教育が必要かもしれませんね。女の子として生まれた悦びを味あわせてやろうかしら?


「まあ、冗談はさておき......」


真面目に仕事をしましょうかねぇ.......はぁ。



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