第26話 元彼との晩御飯
大輝はめずらしく
「すっご、來はやっぱり器用だな。やらないだけであって」
「ちょっと……最後の一言はいらないよ」
「ははは、そうだな。相当
「はい……」
來は教えてもらっていたレシピをメモしてわからないところは李仁にメールで聞くこともある。
一緒に來が作ったスパゲティを食べる。カルボナーラ。大輝もだが美容師は兎にも角にも時間は少なく立ち仕事も疲れて料理も凝ることは少ないが來は頑張って続けている。
「めっちゃおいしー。先週食べたレンチンより全然いいわ」
「あ……カルボナーラ先週食べたばかりだった?」
「うん、でも全然いい。好きだから」
「……だよね、知ってて作りました」
「ふふふ」
大輝は笑いながら最後の最後まで味わう。來はどうして今日来たのかわからなかった。
「……來、お前あまりネット見ないからいうけどさ。リカちゃんとのこと噂になってる」
「……だから、そよね」
「リカちゃん、芸能の仕事でとか言ってたけど事務所の方が仕事いれて美容師の仕事を辞めさせて単独で売り出そうとしてるらしい」
來はそんな話を知らなかった。休み時間や帰り道に話はしているが……と思い出しながらも。
リカはどこかしらやはり來をじっと見ては何かを言いたさそうだが、前みたいにモーションをかけてこない、それは気になってはいた。
「こないだ来ていた新規客もリカのファンだろ、個人のブログに『リカの男のところで髪切ってきた』って書いてあってさ……也夜ファンがそれ見つけて拡散して炎上してる」
來はあまり見ないSNS画面を見てどう見ればいいか分からないが多くの人が自分のことを批判しているのはわかった。カヨやスタッフ達があまりいい顔をしていないと思ったのはそういうことだったのかと。
「……也夜を捨てて女に逃げたかって。馬鹿か、付き合ってるわけじゃないのになぁ……おちょくってはいたけどそんな関係じゃないってはわかってた」
「……」
なんだ、関係ないってわかってたのかよと來はため息をつきながらスマホを開いた。リカから連絡はしばらくない。
「リカちゃんはもう店には来ない。お前とも連絡取らないようにしてるし、明後日の清流ガールズNeoの仕事もなし。あっちの事務所も言ってる。また美容師が内のアイドルを喰おうとしてるってな」
「……すいません。でも関係は本当にないです……」
「仕事中にリカちゃん、お前のこと見ていた……あの目は違ったなぁ。あぁ、お前も結構モテる……俺もわかってた。お前の魅力に。カヨさんだって言ってた……こんなに色っぽい男なぜ也夜みたいに表に出ないんだろうなぁって。表に出たら売れっ子になるんだろうなぁって」
色っぽいだなんて言われたこともなかった來。そう思われていたのか、皿を下げて台所に持っていき皿を洗っていると後ろから大輝に抱きつかれた。さっきまで距離を置いていたのだが。
「大輝さん……」
「ああ、……やっぱりお前は男しかダメなんだな。少しほっとしたよ」
ベルトを外されズボンを下ろされ何も準備をしていない來は焦った。だが大輝はスイッチが入っていた。
付き合った頃もほとんど大輝の方がリードしていて來が受け入れる形だった。
「しばらくは抑えていた。お前がダメになるだけじゃない……俺もダメになる……でももうダメだ」
「あぁああああっ!!!」
耳を舐められ、そこから首筋を這うようにキスをされる。しかも背後から。大輝の腕は來のを、触る。もう反応し、後ろから押しつけられた大輝のも反応しているのがわかる。久しぶりの大輝のものに体が自然と熱くなる。
來も我慢していた。しばらく。也夜の時にはなかった久しぶりのあっち側の快楽に耐えきれず來は大きく叫んだ。
ベッドにだらけて仰向けになっている來。久しぶりの大輝との行為であった。だがそれをリカにできなかった。自分はやはり男しかダメなのか。
「このベッドで也夜以外の人とセックスした。しかも元彼。未遂だとリカもか。もし也夜が明日目を覚まして帰ってきてもこの上で也夜と寝られるのか?」
「……そんなことなんてない。もう也夜のことは忘れたい」
「忘れたい……かぁ。悲しいこと言うなぁ」
大輝はベッドから体を起こした。
「そうそう、残った有休消化して。明日から」
「はい?」
いきなりの大輝からの提案に來も体を起こす。也夜が事故してからしばらく休んでいた間も有休は消化したはずであった。
「……なんで? いきなり明日からって」
大輝は重い表情である。
「もう新しい店の件、休みの間に決めてくれ。すまん」
「大輝さんっ……なんで?」
來は何が何だかわからない。いきなりのことだ。
「手を出した相手が悪かった。下手したらウチの店もなくなる所だった……來を切り離すことで手はついた」
「切り離すって何? ねぇ、なんで今日はここに? なんで僕とセックスしたの?」
來が大輝の腕を掴むが振り解いた。
「ごめん、守りきれなかった。あとは……例の君に投資してくれる人とアポイントとって自分の店を開いてくれ。開けるかどうかわからないが……できる限りのことはする」
と大輝は財布から名刺を出してベッドの上に置いた。
「それにセックスしたのは……むしゃくしゃしたから、1番手っ取り早く安全にセックスできるのはお前だからなぁ」
「……大輝さん」
大輝の目から涙が流れていた。部屋から出てシャワーを浴びにいった。
そしてそれから出ていき、來は1人裸のままベッドにうずくまって泣いた。
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