第4話 元プリンセスの醜態

 馴染めなかった元の職場と違い、ここのみんなは意外と優しかった。

 話を聞くと貧しい家の出身が多かったが、皆懸命に生きていた。

 それに皆大きな夢を持っていて、体を張ってでも叶えようとしていた。

 彼女達は、ここでの仕事はチャンスを掴むためで、早くここから出て行くことを願っていた。

 リコが来て三か月後に、綺麗で目立つ女の子が入ってきた。

 ウズベキスタンから来たモデル志望のイリーナだ。

 客足らいがよく人気があった。

 彼女はリコのことを気に入らないようで、屁理屈を言ってはいつもで絡んできた。

 周囲の仲間が止めていたので、大喧嘩にはならなかった。

 今日のイリーナは、偉く不機嫌だった。

 やりたかったコマーシャルのオーディションに落ちたからだ。

 腹いせにイリーナは、リコに喧嘩を売ってきた。

「元王女様だかなんだか知らないけど、お高く止まって。みんなに嫌われているのがまだ分かんないの」

「何よ、言いがかりは止めて。仕事が決まらなかったからって八つ当たりするなんて迷惑なだけよ。それに私は普通に皆と接しているわ。それより、あなたこそモデルじゃなくて、ただのビッチでしょ」

「皆知ってるわよ、王女さまはセックス依存症。だからこの仕事を選んだ、図星でしょ」

 今まで、このことには誰も触れたことがなかった。

 莉子は腹が立ち癇癪を起こし、そこにあったクションをイリーナめがけて投げつけた。

 イリーナも応戦して、投げつけられたクッションを手に持ってリコの側に立って、思い切り顔を叩いた。

 リコはイリーナの長い金髪を掴み引っ張った。

「なにするのよ、このあばずれ」

 イリーナはリコの手を髪の毛から取り払って馬乗りになり、クッションで彼女の顔をふさいだ。

 リコは息ができなく、足をバタつかせた。

 最初は面白がってみていた女達は、喧嘩を止めるために人を呼びに行った。

 駆けつけたボーイが止めに入ったが、イリーナに突き飛ばされた。

 二人はなんとか周りのいた数人の子達に、取り押さえられた。

 騒ぎは収まり、悔しがって泣いているリコにマネージャーは事情を聞いた。

 イリーナはムッとしていたが、リコの行動がおかしいことに気づいた。

 それからも、リコは気に入らないことがあると何回も癇癪を起こした。

 リコの態度を変だと思ったイリーナはこう言った。

「リコ、あなたは病気よ。治すためにカウンセリングを受けた方がいいわ」

 イリーナはそう言うとマネージャーと交渉をして、リコにカウンセリングを受けさせることを承諾させた。


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