The Great Escape#season3

有池 アズマ

プロローグ或いは孤独

 夜が来る。瞼を閉じる。その向こうで彼が死ぬ。夜はそのくりかえしで、いつか遠い夜明けの来るのを待つ。遠い。夜明けは遠くて、ずっと来ない。

 だから俺はずっと夜の中にいる。彼と開いた新しい未知の世界にずっと、取り残されている。ここには夜だけがやってくる。

 今日もまた夜が来る。瞼の裏で彼が死ぬ。耳に残る悲鳴とともに、ずっと、俺と、夜の中にいる。俺はずっとそれに救われている。囚われている。愛されている。

 これは、誰も知らなくていい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る