第29話


 「午後の授業はどうすんの?」


 「私は出るけど」


 「えぇぇ!?一緒にサボろうぜ」


 「サボってる場合じゃないでしょ。反省文とか書かなきゃだし」


 「そんなもん知らねー。長松のことなんてほっときゃいいんだよ」


 「寮長怒ると思うけどなぁ」


 「お前は良いよな?マンション暮らしで。先輩にどやされることもないしさ」



 私とフレンは寮で生活してるが、アカネは違った。


 私たちに「家族」はいない。


 生まれた時から両親はいないんだ。


 一部の例外を除いては。


 だからマンション暮らしといっても、家族と暮らしてるわけじゃなかった。


 アカネは去年の秋頃からバイトを始めてる。


 私とフレンは将来外交関係の仕事に就くつもりだが、アカネは金融関係の仕事に就きたいみたいだった。


 専攻してる学科もそっち系の分野が多い。


 バイトを始めたのも、将来就きたい仕事のための知識と経験を身に付けたいからだそうだった。


 ぶっちゃけすごいと思うよ?


 将来の為とはいえ、学園生活を送りながら仕事してるんだから。


 バイトで稼いだお金を元手に、元々住んでた寮を出た。


 そっから一人暮らしを始めてた。


 セントラルエリアの一角にある、『ガーデンスクエア』の30階で。

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