第5話 売り上げが落ちて、ついには夫婦喧嘩

「いやいやでは有難く頂戴致します。坂本さん成功を祈ります」

と言って帰って行った。さて明日から二人きっりだ。この五日間の疲れも残っているが、今は気合が入っていてまったく疲れが感じない。最後に二人で乾杯した。

「理香子、疲れただろう大丈夫か」

「貴方こそ私より一時間も早く起きて大丈夫なの」

「なぁに、覚悟の上さ商売が上手く行けば疲れか吹っ飛ぶよ」


 そして六日目、開店時間前に客が並ぶのが好例だが今日は五人しかいない。まぁ今日は天気も良くないし出てくるのが遅いと思っていた。だが閉店まで今まで半分の客しか来なかった。そんな日が続いて一ヶ月更に客は減っていた。やはり最初は物珍しさか、それとも美味くなかったのか。やがて三ヶ月ついに一日の売り上げが三万、これでは仕入れや光熱費を引いたら赤字だ。二人の人件費なんか論外。こうなると問題は深刻だ。そこで考えたのが開店時間を二時間早め七時開店にすることにした。本当は六時が理想かも知れないが、何故なら各家庭の朝食の五割がパン食だと聞く、当然出来立てのパンの方が良いに決まっている。そして七時に開業したら多少は売り上げが延びだが、それほど効果はなかった。


「困ったわね、原因は何かしら?」

「うちのパンに飽きて来たか、美味くないということかもな」

「そんな、あんなに一生懸命ら作ったのに」

「気持ちは分かるが、たとえ俺が君のパンを褒めても客が美味いと言わなければ不味いということなになる」

「そんなハッキリ言わないでよ。毎日朝早くから夜遅くまで頑張って来たのに」

「じゃあ俺のパン作りは君より劣ると言うのか。それは半年遅く始めたから」

「悪いけど、そう思うしかないわね」

「なんだと!! 君はそんなふうに思っていたのか。もうやっていられないぜ」

 とうとう夫婦喧嘩になってしまった。二人とも怒って翌日は臨時休業してしまった。店の休業を見て辰徳の両親が飛んで来た。ところが家に行って見ると理香子しかいなかった。


つづく

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