第26話 誘われて 2


「あん!上手いわ……」


「やっぱり仁くんと違うの〜!」


「あっあん……こんなの知らない!」


「沙織さん……」


「なあに、羅怜央くん?あんっそこスゴイ」


「もう……やめてくれね?」


「何がかな〜♪」


「分かってやってるだろ!周りからも注目されてるわ!恥ずかしいからそんな声出すな!」


 紛らわしい声を出しやがって!エロい事してるみたいじゃねぇか!

 

『羅怜央くん、私としよっか?』


 誘い方からこの紛らわしさは確信犯だろう……俺達の居場所はさっきから変わらずファミレスのまま、やってることももちろんエロく無いよ?


「え〜ただ私は、羅怜央くんが問題作るの上手で〜、やっぱり仁くんと違って勉強出来て〜、こんな解き方知らなかったし〜、そこの問題すごく良いなと思っただけだよ〜♫」


 対いよな・仁用の勉強会での抜き打ちテストを作ってただけだから!


「人をからかいやがって!」


「そんなことしてないよ?邪なこと考えてるからそう聞こえちゃうんだよ〜だ!羅怜央くんのエッチ♬」


 この娘も大概いい性格してんな?でも憎めないのは仁とかいよなと一緒で、俺が好きな性格なんだろうな……


「とりあえず休憩しねぇ?」


「あ〜ご休憩なんてエッチなんだぁ。エッチなのはいけないと思います」


 澄まし顔そんなことを言ったあと、ニヘラと表情を崩して、


「冗談だよ冗談〜そんなに怒んないで〜。仁くんも言ってたけど羅怜央くん顔に出るね〜」


「怒ってないよ?呆れてるだけだ……」


 実際怒ってないんだよなぁ、こういういたずらっぽいことを言っても人に嫌われないのは、その人の魅力なんだろうな……俺とかじゃあムリだな。


「休憩しようよ休憩〜!私ドリンク入れてくる〜」


 俺も行くか。ファミレスのコーヒーは絶対!に飲まないからコーラでも入れてくるか……




 コーラを一気に飲みその炭酸の喉に来る刺激に、飲み物をコーラにしたことを後悔していると、


「羅怜央くん的にはファミレスのコーヒーは許せないんでしょ?」


 身を乗り出して小声で聞いてくる。


「さすがに分かる?俺からしたらファミレスのコーヒーとかありえないから……こんなの飲めるか!」


 俺も身を乗り出して沙織さんの耳元でささやく。 


「クスクス、こだわるもんね〜羅怜央くん、こないだいただいたコーヒーも美味しかったし〜」


「そうだ、仁とも約束してたんだけど、次の勉強会のときに取って置きの豆出すから楽しみにしといてよ!」


「ハハハ、凄い良い笑顔だねぇ、そんなにコーヒー好きなんだ。なんだかかわいいねぇ」


 うわぁちょっとはしゃぎ過ぎたかな、恥ずかしくなってきた。


「あーと……大体テスト問題も出来たし、そろそろ帰ろうか?送るよ……」


 恥ずかしさを誤魔化すためにちょっとぶっきらぼうに帰宅を促す。


「そだねぇ帰ろうか。でも紳士だねぇお言葉に甘えちゃおっと!じゃあ送ってって〜」




 沙織さんを送るために連れ立って雑談しながら歩いていると、気付けば早くも彼女の自宅前まで着いてしまった。 

 思いの外話が弾んで……いや違うな……沙織さんが上手く話を合わせたり、話題を誘導したりして会話を面白くしてくれていたのだろう。凄いなこの娘、コミュ力高ぇな……

 しかしおかげで、殆どサシで話すのも初めてなのに、違和感なく一緒に歩くことが出来たし、ここまで来るのもあっという間だった。まあ端的に言って楽しかったのだろう。

 

「送ってくれてありがとうね〜。今日は問題作らされたりして大変だったでしょう?」 


「そうだな、不意討ちで手伝わされたからな」

 

「あ〜そんな事言うんだ!無理言ってごめんなさいねーだ!……でも私は楽しかったよ?ねぇ……」


「ん?」


「もうちょっとお話したいし、……ウチに寄ってかない?」


 




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