第16話 別離 いよなと莉音

【安里 いよな Side 】


 ラーくんとチャラくんがケンカを始めちゃった……こうなると同じ部屋に居るのは危ないなぁ。

 暴力はだめだよってラーくんには言っておいたのに、やっぱり無駄だったかぁ。ていうか、チャラくんズボン履いてよ〜目のやり場に困っちゃう。


「りっちゃん2人が始めちゃったから避難するよぉ」


「ケンカを止めて!私のために争わないで!」


「りっちゃん結構余裕ある?」


 まあ、あながち冗談ではなく、りっちゃんのためにケンカしてるんだけどねぇ……

 チャラくんはもちろん、ラーくんもりっちゃんのことまだ好きだもんね。


「りっちゃん避難するよ?」


「止めないの?」


「あれを?どうやって?」


 チャラくんがラーくんめがけて飛び蹴りしてる、てか、ホントにズボン履いて!そしてラーくんはそれを後ろ回し蹴りで迎え撃つ。


『はぁぁぁぁぁぁ』『うぉぉぉぉぉぉ』


 なんか漫画みたいな感じでバトルしてる……微妙に楽しそうなの気の所為かな?


「放っとこう、行こ?」


「う……うん」


 ラーくんの部屋を出てリビングへ。あたし達のマグカップは持ち出したので、そのカップに作り置きのコーヒーを入れて手渡す。私は砂糖と牛乳をキッチンから拝借してきて投入!


「ありがとう」


 ひとくち飲んでひと息、やっぱりラーくん家のコーヒーで作るカフェオレは美味しいなぁ。


「いよなちゃん」


「なに?」


「どうしてあんないじわる言うの」


「いじわる?何がかなぁ?」


 分かってるけどわざと言ってみる。こういうところラーくんに似ちゃったかな?いけないな~直さなきゃ。


「茶楽雄くんとのこと赦さないって、いよなちゃん関係ないのに……それに、私がどうしたらいいか考えてくれない……」


「関係ないって……りっちゃん悲しいこと言うねぇ。それに関係ないならりっちゃんがどうしようとそれこそ関係ないよね?」


 その言い方にちょっとイラッとしたので屁理屈で返してみる。りっちゃんは結構自分本位なところがあるんだよねぇ。ラーくんたちの前ではずっと猫かぶっているけど……


「またそんないじわる言う……友達でしょ?」


「友達だよぉ?だから赦せないんだけどなぁ」


「どういうこと?」


「ほんとにわからない?今日どうしたのかなぁ?りっちゃんらしくない……」


 自分本位のところはあるけど決して頭が悪いわけではないりっちゃんが、今日は察しが悪いうえに話すことも思慮が足らないというか子供っぽい……


「羅怜央くんにお別れ言われたんだよ!?何も考えられないよ!」


「自分のせいじゃん?バレたらこうなるよぉ、それくらいわかってたよね?」


「叱られるとは思っていたけどお別れまでなんて考えていなかった……羅怜央くんを信じてたから……」


「え?うそでしょ?普通に考えたらそんな考えにならないよぉ?ラーくんを馬鹿にしてるよ!」


 あんなことされて怒るだけって有り得ないから。それはラーくんを信じてたんじゃなくてラーくんを舐めてただけだよ。


「決定的に危機感がなかったんだねぇ……ラーくんが居なくなるなんて考えもしなかったんでしょ?」


「居なくなんてならないよ?ならないから!」


「居なくなるよ?ラーくんを舐めちゃダメだよ、こういう筋の通ってないことは嫌う人だから絶対に赦さない」


「いよなちゃんに羅怜央くんの何が分かるの?」


「分かるよ~、伊達に生まれた時からの幼馴染やってないよぉ」


 ラーくんもりっちゃんには甘い所があった。多少のわがままは聞いてあげてたから、ラーくんの厳しいところをりっちゃんは知らないかもしれない。


「ラーくんがあそこまではっきり別れるって言ったら絶対に無理だよ?」


「そんなことない……そんなことないもん」


「あるよ?それと言っておくけど私達もお別れだよ?」


「え?」


「だってりっちゃんはラーくんをキズつけた。赦さないって言ったよね?」


「そんな……いよなちゃんまで?私の周りに誰も居なくなっちゃう……」


「りっちゃんの考えが甘いだけで、こうなるのが当然だよ?自分が何したかよく考えてみて?ラーくんと私が浮気したらりっちゃん赦せる?」


「あぁぁ!赦されない……ごめんなさい羅怜央くんごめんなさい……」


 なんか納得いかないけど……


「やっと分かってくれたみたいだねぇ?」


「羅怜央くんをキズつけちゃった……」


「ラーくんのキズは私が癒やすから……りっちゃんは心配しなくて良いよ?」


「どういう事?いよなちゃんがなんで?」


「気付かなかった?私ずっとラーくんのこと好きだったんだよ?」


 今までずっと胸に秘めてたことをりっちゃんに伝える。りっちゃんはすっごく驚いた顔で、


「え?どういう事?」


「だからぁこれからは私がラーくんの隣で彼を癒してふたりで幸せになるよ。もうりっちゃんを当てにしない」


「当てにしない?」


 いままでりっちゃんならラーくんを幸せにしてくれると期待していたけど、それも当てにならないと今回のことで分かっちゃった。それなら私が自分でラーくんを幸せにする。


「そうだよ、今までりっちゃんにラーくんを任せてたけど、もう別れちゃったから私がラーくんの隣に寄り添うんだよ?」


「そんな……でももう羅怜央くんの隣には……」


「居られないねぇ。というか、居ちゃいけないよね?ラーくんを裏切ったんだから」


「そんな……そんなのいや……」


「ラーくんも言ってたよね「せめて次に付き合うやつとは誠実に付き合えよ?」だったかな?チャラくんと付き合うか知らないしどうでもいいけど、今度はちゃんと相手を見てあげてね?」


「なんで?なんでこんなことに……私はなんてことをしたの?」





◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。



いよなちゃんと莉音さんのお別れです。

男連中のときと違って、なんか湿り気のある会話というかなんというか……


次回も読んでいただけると嬉しいです。


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