第37話「同じ学校の仲間として、これからも宜しくお願いします」

翌日、いつものように、朝のあいさつをすると反応が物凄かった。


クラスのほとんどの人たちが、私へあいさうを返してくれたのである。


そして、皆がお互いに元気よく、あいさつを交わしていた。


あいさつを交わす心地良さを全員が感じているのか、皆、笑顔。


何か、クラスの一体感が、とんでもなく増した気がする。


そして、午前の授業が3つ終わり……


キ~ン、コ~ン、カ~ン、コ~ン!!


と、いつものごとく、

結構なボリュームでチャイムが鳴り、昼休みとなった。


そして何と、颯真君が声をかけずとも、クラスのほぼ全員が、

学食へ出発すべくスタンバイしていた。


わお!

凄い!


と思って、颯真君を見たら、Vサイン!


この流れに乗れ!

って感じ。


「行こうぜ! 凛ちゃん! 遥ちゃん!」


颯真君のGOサインが出た!


「遥! おひる行こ!」


「了解! 凛!」


クラスメートたちと一緒に、学食へ出撃!

廊下でスタンバイ状態だった海斗君も合流!


授業終了後、速攻で移動したから、まだそんなに他クラスの生徒たちは来ていない。


私たちはこれまた速攻で、思い思いのメニューの料理をゲット。


確保した席に持ち帰り、


「いただきます!」


と、颯真君の合図に、「いただきます!」と応え、

食べ始めた。


と、そこへ1年生の他クラスからも続々、参入が。


多くの人達が、メニューを持ち、空いている席へ座った。


あっという間に、私たちが陣取る学食の一画は、1年生だらけになってしまった。


と、そこへ……


「食事中、申し訳ない。ちょっと良いかな?」


と、聞いた事のある声が、私の耳へ入った……


え?

と思い、声のした方を見やれば、立っていたのは、以前強引に私を誘おうとした、

他クラス陸上部の相原亮あいはら・りょうさんだった。


すかさず!

颯真君が!


続いて!

海斗君が!


ふたりがほぼ同時に、座っていた椅子から立ち上がった。


そして遥は座ったまま、相原さんを「きっ」とにらんだ。


3人から見つめられ、相原さんは苦笑。


どうするのかと思いきや、柔らかい笑顔で、私に深々と頭を下げ、謝った。


「海斗から話を聞いたかもしれないけど、凛ちゃん、君にもう一度謝りたかった。本当に申し訳なかった!」


敵意が全く感じられない相原さんの穏やかな様子を見て、海斗君が問う。


「亮、約束……本当に守ってくれるんだな?」


「当り前だ、海斗。俺、結局、凛ちゃんとは縁がなかったよ。……いつか、好きな子に巡り合えるよう、まずは競技で頑張るから」


と相原さんは答えてくれた。


ああ、先日もちゃんと謝罪したし、相原さん……やっぱり礼儀正しいな。

海斗君の言った通りだよ。


ここで、立っていた颯真君と海斗君が顔を見合わせた。


ふたりとも、大きく頷く。


そして颯真君が私へたずねて来る。


「凛ちゃん」


「はい、颯真君」


「約束さえ守ってくれるのなら、相原君は同じ学校の仲間だ」


相原さんは、同じ学校の仲間……確かにそうだ。


颯真君がこんな事を言うのは意外だけど、私は素直に頷いた。


「ええ、そうね」


「凛ちゃんの隣の席で食事、とかは絶対にナシだけど、相原さんがこの場へ入る事を許してやってくれないか?」


「う、うん……」


颯真君の言葉を聞き、少し驚いた。


私たち3人から詳しい事情を聴き、

颯真君は、相原さんとの『仲直り』を考えていたのかもしれない。


もしかしたら、ハンバーガーショップでの打合せ後、

海斗君と男同士、ふたりでいろいろ相談したのかもね。


そして、言い合いをした相原さんの、素直な謝罪を受けて、

『仲直り』を決めたに違いない。


と、ここで海斗君も。


「いきなり押しかけて来て、ちょっと、びっくりしたけれど、俺は信じていた。亮は、誠実な奴だってさ。そして今日来たのは、凛ちゃんへ改めて謝罪し、ちゃんと『けじめ』をつけたかったんだろ? なあ、亮」


海斗君からたずねられ、相原さん。


「ああ、そうさ」


と、肯定こうていした。


海斗君は、いたずらっぽく笑う。


「それと、さびしんぼの亮は、俺たちの仲間にも入りたかったんだろ? この場にはこの学校の1年生、ほとんどが来ているからな」


「ああ、海斗、その通りだ……『ぼっち』は嫌だからな」


苦笑した相原さんは、再び肯定した。


私だって、もしも遥が親身に付き合ってくれなければ……

クラスにろくに友だちもおらず、とんでもなく『ぼっち』だった。


ここで颯真君が、相原さんへ問う。


「相原さん、念の為、俺からも聞こう。もう二度と凛ちゃんに無理は言わないな?」


「ああ、言わないよ。ここに居る全員に誓う!」


相原さんは大きな声で力強く言い放ち、私達へ約束してくれた。


今度は海斗君が遥へ、


「遥も良いかな?」


「うん、私は許すよ。相原さんがきちっと約束を守ってくれるのなら」


遥は、海斗君を信じている。

だから、あっさりOKした。


私も、颯真君を信じよう!


そして、ここで、最後に締めるのは私だろう。

はっきりと言わないといけない。


変に余計な事を言わずに、ただただシンプルが良い。


私は微笑み、相原さんへ告げる。


「相原さん、同じ学校の『仲間』として、これからも宜しくお願いします」


「あ、ありがとう! こちらこそ、宜しく!」


私たち4人全員が謝罪を受け入れ、相原さんは、また頭を下げたのである。

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