第6話「そうです! 全身全霊で応援します! 凜は私の一番大事な友達、一生大切にしたい最高の親友ですからっ!」

果たして……

お母さんを味方にし、上手く行くのだろうか?


疑問に思い、悩んだが……論より証拠。


迷っていても仕方がない。


それに考えていてばかりじゃ、何も変わらない。


まずは、行動しよう。


決めた!


私は、遥の助言に従い、部屋へお母さんを呼んだ。


本当に大事な話があると頼み込んで。


いつにない、ひどく真剣な私の顔を見て、お母さんはどう思ったのだろうか?


でも、いつもの明るいお母さんのノリで、私の部屋へ来てくれた。


「あらあらあら、りんったら、本当に大事な話なの?」


ここではるかが、フォロー。


「ええ、彩乃あやのママ。凛がこれから話すのは、本当に本当に大事な話なんですよ」


「へえ! 本当に本当に大事な話? 凛、本人より、親友の遥ちゃんが言うのなら、間違いないわね、うふふふ」


ええっと、それって、お母さん、何?

遥が言うのなら間違いないって……


自分の娘を、信用全くナッシングって感じに、

思い切りディスっているんですけど……


心へ、大きなダメージを喰らったが、臆してはいられない。


私の初恋を成就させる為に遥が考えてくれた、作戦の第一弾だもの。


「じゃあ、凛、まじめに聞くわよ、話してみてちょうだい」


と言い、お母さんは姿勢を正した。

表情も真剣になっている。


しかし、いざとなると……どう切り出して良いのか……

情けないけど、頭が回らない。


ヘタレな私の様子を見て、遥が更にフォローしてくれた。


「あの……彩乃さん、10年前、凛が6歳の時にショッピングモールで、迷子になったのおぼえていますよね?」


遥は笑顔で母へ尋ねた。


対して母は、


「ええ、当然よ。はっきり憶えてるわ。……ショッピングモールで買い物中、いつの間にか凛が居なくなって、大騒ぎしていたら、いきなり館内放送が流れて、凛が管理事務所に居るって言われ、急いで駆けつけたもの」


「そうです。で、その続きの話を凛がしますね」


「ん? その続き? 遥ちゃん、なあに、それ?」


首を傾げるお母さん。


ここで、遥がフォロー。


「はい! ほら、凛! ここでバトンタッチ! 勇気を出して! 貴女は10年越しの初恋を絶対にかなえるんでしょ?」


「う、う、うん! あ、ありがと! 遥!」


ありがたい!

ナイスタイミング、遥のフォロー。

本当にありがとう!


「ええっと、お母さん」


「なあに? 凜」


「そ、その時……同じくらいの年齢の、どこの誰だか、知らない男の子に管理事務所へ連れて行って貰ったって、私、言ったよね?」


私は一生懸命言葉を絞り出した。


そんな私を見てお母さんは柔らかく微笑む。


「ええ、確か、管理事務所の方も、同じ話をしていたわね……凜を連れて来てくれた男の子……名前も言わずに行っちゃったって」


ここで言う。

私は今日、運命的な再会をしたんだって!


「お、お母さん! あんまり、びっくりしないでね。そ、その男の子とね、き、今日! さ、再会したのよ! 学校で!」


私の話を聞き、さすがにお母さんも驚く。


「え、ええっ!? そ、その男の子に!? さ、再会!? が、学校で!? そ、それ本当!?」


さすがに、思いっきり噛んでいるお母さん。

その様子は、私とそっくり!


やっぱり親子、母と娘かあ……


そう思ったら気持ちが軽く、楽になった。


もう大丈夫。


いつものように話せる。


私は更に言う。


「うん! 本当! 今日ね、転入生が私達のクラスへ来て! 私の名前をおぼえていて、その時、10年前に私とした会話を、私へはっきり言ってくれたの!」


「そ、その時の!? 凛とした10年前の会話!?」


「うん! あの時、お母さんにも言ったけど、その子はね! 『ぼくもさ、迷子になった事あるんだよ』って言ったわ」


「あ、ああ! そ、そうよね、凜! お母さんも思い出した!」


「それと! 『お姉さんにお願いすれば絶対に大丈夫だよ! すぐにお父さんとお母さんが来るよ!』とも言ったの!」


私はお母さんにそう言い、10年前の記憶をたぐった。


はっきりと……10年前の光景がリフレイン! 

……鮮やかによみがえって来る。


ショッピングモールで迷子になり、ただただ泣く私を、

優しく手を握って……颯真そうま君は……励ましてくれたんだ。


「それでね! お母さん! あの時の、男の子の名前は、岡林颯真おかばやし・そうま君っていうのよ……」


「へえ、岡林颯真君か。名前はどういう字を書くの?」


「ええっとね……岡は……」


と私は名前の漢字を教え、


「お母さん、私ね。10年前に言えなかったお礼をとうとう言えたよ。ありがとう! って言ったら、また彼は、……颯真君は言ってくれたの。何かあれば、俺が守るって……凄く、凄く、嬉しかった」


「凛……」


「それではっきり分かった! 私の気持ちが! 颯真君はね、……初恋の相手だと思うの、お母さん……」


10年の想いを込め、言う私。


ここで遥がまたフォローしてくれる。


「でもね、彩乃ママ。10年って、成長した颯真君は、カッコいいイケメンで、クラスの女子に大人気。恋のライバルがいっぱいなんです! 凛はね、戦わないといけないの」


「恋のライバルがいっぱい……凛が戦わないといけない……」


「うん! 10年越しの素敵な初恋を、凛が成就させる為に! 私、凜が幸せになる為だったら、一生懸命、応援します!」


「遥ちゃん……貴女……凜の為に応援してくれるの?」


「そうです! 全身全霊で応援します! 凜は私の一番大事な友達、一生大切にしたい最高の親友ですからっ!」


きっぱりと言い切った遥。


お母さんは黙って遥を見つめている。


「………………………」


「こんなに運命的な再会をしたんだもん! だからね! 私と一緒に彩乃ママも! 凛の初恋がかなうよう全力で応援してください! どうか! どうか! 宜しくお願いしますっ!!」


遥は身を乗り出し、熱く熱くお母さんに迫った。


何という!

遥は、まるで自分の事のように、私を思いやってくれている。


「は、遥ああ!!! あ、ありがとうぉぉぉ!!!」


嬉しくて、本当に嬉しくて……

胸がいっぱいになった私は大声で叫び、遥に抱きつき、号泣していたのである。

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