第7話 大人のお店のクーポン券

「あちぃ」

 ついに水着になった。しかもすごい際どいやつ。即、二回目の反省文になった。


「男性がタンクトップで授業するのと同じですよ。ここは女しかいません! 何も犯罪にはならないはずです」


「福富先生、このアホを更衣室へ」

 若くて細身の先生にゴリラは連れて行かれた。単に手が空いているという理由だけで使われて可哀想に。


「中田、ちゃんと注意してくれ。春はもう少しマシだったぞ」


「先生もちゃんとしてください。そもそも梅雨に入った瞬間に諦めるからですよ」


「あれが最高潮だと思ったんだ」

 毎年、うちの学校はあるホテルで年に一回勉強合宿を行う。年度によって開催月はまちまちで、今年は八月で来年は四月になるようだ。

 噂では四月にと上から言われるけど、八月ならビールが美味しいらしい。ごまかしがここ数年続いていて、上も隔年ならと言ったらしい。

 教員陣しっかりしろ学校行事だろ。

 ゴリラが中学生の頃に反省文を書いたのはここでの行動からだった。


 ホテルの周りには夜にしか開かない大人のお店が多くあり、中学生の頃、それを朝の体操でホテルの窓から確認したゴリラが友人数人に声を掛けて、大人のお店に潜入した。


 二の足を踏む友人にお得意ので踏み込んだのは結局ゴリラ一人。中にいたお姉様はみんな優しかったそうだ。


 後から先生に「まさか泡風呂も経験させてもらうなんて、男性の皆様が羨ましいですな」と、言い。怒りで真っ赤な先生に反省文を命じられたという。


「あと、これクーポン券です。来年はいかがですか? あ、心配されなくても私の名前を出して貰えばサービス増量らしいですぞ」

 文字数が二倍になったという。


「やっぱスク水の方が良かったかね。でもな、ちょっとエッチだしな」

 スク水でエッチだと感じる方がよほどエッチである。そもそもお弁当食べながらする話では無い。


「それよりかちゃんと出ていて、スッキリしている方がいいに決まっている。明日、反省文書くから、お願い手伝っ」


「て? か、前田。いい身分だな」


「て、くれなくていいですよ。やだなぁ」

 生徒指導の先生に頭を握られた前田は少し可哀想だった。


「で、中田。どんな話だ?」


「くれなくていいから、終わるまで待っていてね。一択だと思います」


「いつかみたいに文字数二倍にならなくて良かったな」

 手を振って先生を見送った。


「手伝って」

 小声で言えばいいもんじゃないと、バッグに仕込んだ新聞紙の棍棒で前田の頭を叩いた。


「皆さん、見ましたよね。人がお願いをしているのにこの女、私を叩きましたよ! いやぁ、人がすることかね」


「反省文の文字数二倍にしてもらうことは簡単に出来るよ」


「一生懸命作成に勤しみます」


「それでこれは興味なんだけど、何枚のクーポン券があって、どれくらいはけたの?」


「それがですな親分、十枚貰って六枚はけました。みんなこっそりと貰いに来ましたよ。だから六人分の恩があるので、停学にはなりませんぜ。既婚者が三人いました。名前は」


「言わなくていい。真剣に情報はいらないから」


「ほうほう、中田さんは奥手ですな。最近の女子高生はみんな風俗の存在を知っているものですよ」

 存在は知っていても聞いて私は気持ちいいものではない。


「四枚残っているので、私と中田さんで二回ずつ使いませんか? 体を洗って貰えるってそんなに多くないですよ。痛っ」

 棍棒で殴りつけた。

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