08 モニタルーム

 数多の戦闘を重ね、たどり着いた部屋は多数のモニタの並ぶ部屋だった。扉を開けた瞬間にすえた臭いが漂ってくる。

 モニタの一つには肌を重ねるカナコと俺の姿が映っていた。

 それを見ていた男が慌てて立ち上がろうとする。

 やつは膝まで下ろした下着とズボンに足を取られて無様に転んだ。


 「おい、クローンはここに入ってこれないんだろ? どうなってんだよ、話がちげーじゃねぇか」

 狼狽してわめく男にカナコが無言で剣をふるう。

 切り落とされたものを俺は踏み込む足で踏み潰す。思い切り振り下ろした槌が同時に男の頭を砕いた。


 それがモニタルームでの戦いのはじまりだった。

 人を殺すのは初めてだったが、迷いはなかった。

 俺たちは満身創痍になりながらも、部屋の敵を皆殺しにした。

 最後の一人は命乞いをしていた。

 カナコはそれを無視して、剣を振り下ろそうとした。

 俺はカナコをとめる。男の表情が緩んだ瞬間に俺はやつの足に槌を叩きつけた。彼女にこれ以上人を殺めさせたくなかった。男に楽な死に方もさせてやりたくなかった。ぎりぎりまで痛みと恐怖と後悔に苛まれれば良いのだ。痛みと恐怖と後悔を最大限に与えられるのはカナコではなくて、俺だ。

 「すぐに壊したりしないさ。大切に大切に遊んでやる」


 最後の敵の痙攣がとまったところで、俺たちは部屋をあらためる。

 モニタには俺たちの様子が逐一録画されていた。

 録画されていたのは俺たちだけではない。

 他の〈人間〉たちの様子も録画されていた。

 俺たちと同じような首輪をつけられた人々が、お互いに遭遇し、戦いを繰り広げる様子が記録されていた。

 

 嫌な予感を感じながら、記録映像をザッピングしていく。

 俺たちが戦っているところを見つけた。

 ハザマの最期の言葉が頭をよぎる。ここには「怪物」なんていないのだ。

 

 「やめて、もうやめて」

 カナコが泣いた。

 彼女の言う通りにしておけば良かったのだ。

 しかし、それでも手がとまらなかった。

 彼女の頼みをきかなかったために、俺たちは嬉々として人間を解体し、その肉に衣をつけて揚げる自分たちの姿を見ることになる。

 モニタが吐瀉物にまみれた。

 

 今思えば、最初に死んだ大男は幸運だ。

 恐怖も絶望も感じることなく死ぬことができたのだから。

 俺は首輪とコードに手をやる。

 これさえなければ……。

 それでも俺はこの悪魔の装置を引きちぎれない。

 俺はもう一度盛大に嘔吐した。

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