03 ダンジョン配信

 悲鳴やすすり泣きが収まった頃に茶運び人形は説明をはじめた。

 与えられたものを活用して、この「ダンジョン」から脱出することが俺たちに課された使命なのだという。

 俺たちの活躍次第では、脱出に有利な恩寵が与えられることもあるという。


 反吐が出る。

 要するに俺たちはどこかの誰かの見世物にされているわけだ。どこのおかしな金持ちどもだろう。リアルで他人の頭が弾け飛んで楽しいとか、人間としておかしいんじゃないか。


 それでも、俺たちに別の選択肢は与えられていない。やつの指示に従って、ロッカーから武器防具を手に入れた俺たちは殺風景なダンジョンを進む。

 

 そして、「怪物」と遭遇した。

 身体中にできもののある二足歩行の怪物。できものは常にぶちぶちと潰れていて、体表は膿でねちょねちょと濡れていた。頭はあるものの、そこにはなにもなく、身体にぱっくりと大きな口を開けていた。


 「jYP|Pgp$LlWp;]*70S-hmVx/Su+r+U7Ltkp0so[?ER%apMML5^!`f"2SF?fV」


 怪物は身体に開く大きな「口」から奇妙な叫び声をあげると、斧らしき武器を振り上げた。


 いきなり一人、それも一番強そうなメンバーを失った俺たちの境遇は不運である。

しかし、初めての戦闘に関しては幸運であったといえる。


 はぐれた個体であったのだろう。

 一匹だけだったのが幸いした。

 気持ちの悪い姿をした怪物はその姿から想像できないが、悲鳴のような声をあげると逃げ出そうとした。

 俺たちはこいつを追い詰め、囲み、何度も何度も武器を叩きつけて始末した。

 悲鳴が出なくなるまで武器をふるい続けた。

 紫色の血がパーティーメンバーの武器や防具を濡らした。


 ◆◆◆


 女性陣の防具は身体の線がでるものだ。

 こういうものをどこかでニヤニヤと笑いながら「見守る」人でなしどもがいるのだろう。

 女性陣がダンジョンのところどころに存在するセーフゾーン内のシャワーで身体を洗うとしばしば、新しいアイテムが支給された。

 強い武器、頑丈な、それでいながら劣情をさそう防具、有用なアイテム。

 彼女たちの意思をまったく無視して強制されるストリップと下卑た「投げ銭」。


 目に見えぬ人でなしどもの欲望を憎みながら、自分の中で常に首をもたげようとする劣情を俺は必死に抑える。

 こんな俺の姿でさえ、人でなしどもはニヤニヤと見守っているのだろう。

 俺がこらえきれずにシャワー内でこっそりと欲望を吐き出した後、俺用の新しい武器が支給された。

 壁に頭をつけて「死ね」という言葉を人でなしと自分に向けて発する俺の背中をカナコがさすってくれた。

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