第9話 トルドの手紙を無視した私の朝
次の日の朝。私はベッドから起き上がり、優雅に顔を洗って私服に着替えて支度をする。
支度が終われば朝食だ。食堂の椅子に座ると、両親が慌てて食堂へとやってきた。
「リリア、私服じゃなくて制服に着替えないと!」
「昨日トルド様から届いたお手紙、読んでないのか?!」
ああ、あれの事か。トルドが学園には来いって言ってたあれか。
「お父様、お母様。確かにあれはトルド王子様からのお手紙でした。しかし私達は追放処分となった身。ここは敢えてこの場にいるべきだと思いますの」
「ど、どういう事だ」
「まずは罠である可能性があるという事。そして追放処分の私がのこのこと出てくるなんて反省が足りないと思われる可能性があるという事です」
「成程な……」
「ですから私は学園には参りません。この洋館で静かに暮らします」
私はそう言い切って、コックに向けて右手を挙げた。
「朝の紅茶でございます」
「ありがとうございます。頂きますわ」
ぽかんと口を開けたままの両親は放置して、朝の紅茶を満喫する。紅茶の味はどちらかと言うと薄目で、すっと口の中に入って来る。
「紅茶美味しいですわね」
「ありがとうございます」
「では、朝食もお願いいたします」
「畏まりました」
運ばれてきた朝食は、オムレツに丸いパンが2つ。野菜が入ったコンソメスープに茹でたソーセージが3本だった。
(どれも美味しそうには見える)
私は早速スープから頂く。にんじんと大根かカブが刻まれて入っており、だしもしっかり染み出ていて美味しい。オムレツは食感がとろとろしており、ソーセージとパンも塩気が程よくのっててとても美味しい。
「どれも美味しゅうございました」
朝食を完食し、部屋に戻ると2.3分ほど経ってナホドが朝の挨拶にやってきた。
「ナホドです。今日もよろしくお願いします」
「ええ、よろしくね。無理はしちゃだめよ」
「はい。お気遣い……ありがとうございます」
やはりナホドの微笑みは私の身体に良い。身体の奥底から浄化されていく。
(てえてえ……)
元彼の笑顔を見た時も、こんな感覚だったのを思い出す。やはりナホドは元彼と似ている。そっくりだ。
「はは……」
「リリア様、どうなされました?」
「はっ」
ついついオフモードになっていた。ちゃんとリリアを演じなくては。
「いえ、何でもありませんわ」
「それなら良かったです」
「いつも良い表情ですわね。ナホド」
ちょっと本音を伝えてみた。ナホドは少しだけ恥ずかしそうにして、ありがとうございます。と返してくれた。
(あ~~良いな。良い……!)
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