両手は空っぽなのか

ジャスミン コン

第1話 夫の母国語ができなかった妻

 アジアのとある国に移住して2年。

 外国人の夫は、日本語が堪能である。

 よって(?)、私は夫の母国語を真剣には学ばないまま早10年以上。ついに、夫の国に移り住むことになって私は初めて言葉ができない不自由を知った。

 もっと早く知っとけよ、である。義両親との会話はどうしていたのか。

 これがね、なんとかなっていたのである。

 話すのは苦手だが、そばで聞き続けた結果、リスニングだけはできたから。日本語以外に2つは外国語が話せるので、たぶん語学には向いている方だ。

 他の2つは普通に大学で勉強し、留学して覚えた。

 外国語3つめである、夫の言語はどう学んだかというと。

 結婚当初から週に1、2回、夫が両親とスカイプ(だっけズームみたいなの)の際に横に座ってひたすら聞いた。夫はほぼ、通訳してくれず、ひたすら話している。

 満員電車に乗ってフルタイムで働いていた私、「こんにちはとありがとう」しか知らない言語を2時間、聞き続ける苦行しかもフライデーナイト。

 家族愛は分かるけど、新婚よ?そんで私、言葉分かんないのよ?眠い。金曜ロードショーが観たい。グーニーズでもボディガードでもいいから、観たい。

 夫家族との会話は、空気を読むことに徹するしかない。真剣モードな時は神妙な顔をし、皆が笑ったら微笑んではみた。意味はワカラン。あれ、ケンカかな?あ、違うんだ、とかね。

 毎週、2時間は呪文同様の言葉を聞いていたら単語の切れ目が見えるようになり、頻出単語をいくつか覚えた。すると前後の単語に予想がきくようになる。

 そうこうしているうちに、だいぶ理解できるようになった(気がした)が、やはり本気で机に向かわないと習得は難しい。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る